研究課題/領域番号 |
17H05049
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
椿 俊太郎 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (90595878)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | バイオマス / 電解酸化 / ポリオキソメタレート / マイクロ波 / 高周波 |
研究実績の概要 |
本課題では、高周波を照射することによってバイオマスの電解酸化を促進することを目的として、まずは高周波照射中に化学反応を行うことができる高周波化学反応系を確立した。信号発生器に広帯域RF増幅器を接続し、高周波発生装置とした。平行平板型アプリケーターの電極間に試料を導入し、試料に高周波(200MHz)を入力することができるシステムとした。高周波照射中の入力電力は方向性結合器に接続したパワーセンサーを介してパワーメーターでモニターした。続いて、本装置を用いてモデル反応系において高周波とポリオキソメタレートの相互作用を確認した。三電極系の電気化学セルを高周波アプリケーター内に設置し、ポリオキソメタレート水溶液を加えた。アプリケーター内に作用極を配置し、ポテンショスタットで電位をかけながらパルス的に高周波を印加した。水の酸化分解が生じる電位において、高周波パルスの入力電力に応じて酸化電流の増大が見られた。一方、導波管型のアプリケーターを用いて2.45GHzのマイクロ波を照射した場合は、上記のような応答は観測されなかった。既往の研究で、ポリオキソメターレートは高周波帯域にイオン伝導に伴う電磁波の吸収が存在することを見出しているが、上記の結果は高周波に特異的な反応が生じることを示すものであると考えられる。 また、触媒の高周波の吸収性の向上を狙って、対イオンの交換による誘電特性の向上を図った。ポリオキソメタレートの誘電特性がカチオンの移動度に大きく依存することに着目し、イオン交換樹脂を用いて移動度の大きいH+を導入し、置換度の異なるH+型ポリオキソメタレートを作製した。H+の置換度が上がるにつれて、高周波帯域の損失(導電損失)が大きくなったことから、高周波応答性の向上が確認された。さらに、本触媒を用いて反応を行った場合、高周波の照射による酸化電流の向上がより大きくなることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標であった高周波化学反応装置の開発と、本装置を用いた電気化学反応系の確立を完了しており、概ね順調に研究は進展している。さらに、ポリオキソメタレートの誘電特性の制御方法の確立や、本法によって作製した高誘電損失のポリオキソメタレートにおける選択的な反応促進も見出しており、部分的には初年度に計画した目標以上の成果を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでモデル反応系で試験を行ってきたが、本年度は実バイオマス基質への応用に着手する。そのために、以下の3点について、改善する。 ①高周波の浸透深さとIRドロップを考慮して、触媒濃度や緩衝液濃度、バイオマス基質の濃度を最適化する。 ②実バイオマスの電解に適した溶媒として、水以外にイオン液体などを検討し、高選択的にバイオマス基質を酸化できる反応条件を探索する。 ③高周波化学反応装置の操作性の改良:初年度に開発した高周波化学反応装置は、発振器部分むき出しのため、操作性や安全性を改良するために安定化電源と増幅器の一体型増幅器に改良する。また、バリコンによる整合部分についても、反応中の整合を取りやすくるため、アプリケーターと分離したユニットとして増設する。
|