触媒反応を駆動する高周波誘電加熱装置の効率向上を進めるともに、これまでに開発してきたin situ XAFS、Raman、誘電率測定を組み合わせ、電磁波によって触媒反応が加速される現象の機構の理解を進めた。 <高周波誘電加熱装置の改良>前年度までに、反応系とのインピーダンス整合特性を明らかにして、効果的に被照射物に電磁波エネルギーを供給できることを示してきた。一方、反応中や加熱中に誘電特性が変化する場合、マニュアルでは精密に物性変化に追従することが困難であった。そこで、新たに高周波装置をS11特性に基づいて最適周波数を照射することができるように改良した。触媒ないしは基質に、常に最適な電磁波を供給することができる高周波化学反応装置として完成した。本装置は、反応物の誘電特性に応じて、平行平板型、空洞共振器型、通電加熱型から共振器を選択し、最適な電磁波を反応系に印加することができる。 <電磁波による触媒反応促進機構の解明>担持金属触媒においては、反応活性点となる担持金属に電磁波エネルギーが集中しすることで、反応が加速されることを見出した。バイオマスの脱水素反応のモデルとしてアルコールの脱水素反応を行ったところ、マイクロ波では担持金属が迅速に還元されて、脱水素反応が加速されること見出した。一方、金属酸化物触媒であるWO3触媒においては、in situ Rmana測定によりマイクロ波を照射することで触媒表面が還元され、生じたルイス酸点およびブレンステッド酸点が、アルコールの脱水反応を加速していること見出した。これらの成果は、Communications Chemistry誌やACS Omega誌(Higlighted in supplementary cover)に掲載された。また、本研究における主要な成果について、日本エネルギー学会進歩賞(学術部門)を受賞した。
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