研究課題/領域番号 |
17H05061
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
増田 真志 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (50754488)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 |
研究実績の概要 |
骨から分泌されるFGF23は腎臓リン調節機構の中心を担うが、慢性腎臓病(CKD)ではこの機構が破綻して骨ミネラル代謝異常へと発展する。CKDモデル動物で血中レチノール濃度の異常な高値による腎機能低下の助長が報告されている。近年、急性腎障害発症に対するエピゲノム変化の関与が報告され、CKD発症に関しても同様の可能性が考えられるが、ビタミンAとCKD発症とエピゲノム変化の関係についてはよく分かっていない。本研究は、血中レチノール濃度の異常な上昇によるFGF23/Klothoエピゲノム変化を明らかにすることを目指す。初年度(2017年度)は8週齢雄マウスの腎臓5/6を摘出し(CKDモデル)、レチノイン酸受容体antagonist(RAR-ant)を9週間投与した。その結果、大腿骨重量はCKD群で減少し、RAR-ant投与により増加したが、血中FGF23濃度および骨FGF23 mRNA発現量には差は見られなかった。次年度(2018年度)は、別の方法(アデニン投与)で作製したCKDモデルマウスにRARα選択的なantagonistまたはpan-RAR antagonistを4週間投与した。その結果、CKD群の血中リン、BUN、FGF23濃度の高値から腎機能の悪化を確認し、2つのantagonistにより血中リン、BUN濃度の改善傾向、FGF23濃度に関しては更なる上昇傾向を示した。次に、human FGF23 reporter vectorを細胞にトランスフェクションし、all-trans retinoic acid (ATRA)を添加するとFGF23転写活性はRAR依存的に低下し、その効果はRARγで最大を示した。次に、デリーションベクターを作製して同様に検討した結果、ATRAによるFGF23転写活性抑制に関わるプロモーター領域を推測することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、各ステージにおけるCKD発症に対するビタミンAの影響を検討し、どのステージ(性成熟期、繁殖期、老齢期)が今回の実験に適しているかを確認することができた。さらに、CKD時にみられる血中レチノール濃度の上昇状態への対策は、大腿骨重量、骨格筋の重量、筋力およびタンパク質発現、さらに腎臓の遺伝子発現に対してある程度効果があることを明らかにした。次年度は、CKDモデルマウスへのレチノイン酸受容体(RAR)antagonist投与による血中リンやFGF23濃度に対する影響を評価することができた。さらに、ルシフェラーゼアッセイによりhuman FGF23の転写調節機構に関してもある程度検討できたので、実験は概ね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
FGF23/klothoのエピゲノム変化(DNAメチル化、ヒストン修飾)によるCKD発症機序を解明するために、繁殖期の雄C57BL/6Jマウスにアデニン食を与えCKDモデルマウスを作製した後に、1 mg/kgのレチノイン酸受容体(RAR)αアンタゴニスト(Ro 41-5253)またはRARγアンタゴニスト(MM11253)を3週間投与し、以下の解析を行う。大腿骨を採取し小動物用3D-X線CTにより骨密度を測定し、さらに骨代謝に関わる遺伝子発現変化をReal-timePCR法により解析する。これらの結果から繁殖期のCKDモデルマウスの骨ミネラル代謝異常に対するRARのサブタイプの作用の違いを評価する。腎臓を採取して、FGF23/KlothoのDNAメチル化をバイサルファイトシーケンス、ヒストン修飾をペプチドマイクロアレイやChIP-Seq法で解析して、CKDによるFGF23/Klothoのエピゲノム変化に対するRARのサブタイプの作用の違いを評価する。 次に、ChIP法を用いてRAによるヒストン修飾を介したFGF23転写抑制に関わるnRARE領域を絞る。さらに、nRARE部分にMutagenesis Kitを用いて点変異を入れたFGF23遺伝子のReporter Vectorを作製してLuciferase assayによりnRAREを同定する。このnRAREに結合し、RAR/RXRと複合体を形成する未知のタンパク質をYeast one-hybrid法により探索する。
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