研究実績の概要 |
染色体異常は非常に高頻度で見られる遺伝的疾患であるが、染色体異常そのものを修復する根本的な治療法は現在のところ存在しない。申請者らの研究グループは先行研究において、環状染色体という非常に稀な染色体異常の体細胞から誘導性多能性幹(iPS)細胞を作成すると、その染色体異常が片親性ダイソミーとして細胞自律的に修復されることを見出した(Bershteyn*,Hayashi*, et al., Nature, 2014; *はEqually Contributedを示す。) 。本研究においては、この発見を一般的な染色体欠失・転座に応用可能であることを実証(Proof of Concept)し、全く新しい染色体治療のコンセプトである 「染色体編集」法として提唱することを目的として研究を行う。令和元年度は、「染色体編集」され、片親性ダイソミーとなったiPS 細胞株に対し、元の染色体異常を持ったiPS 細胞株と比較して、①染色体異常に起因する表現型と遺伝子発現の異常がそれぞれ修復されているか、②染色体編集により再生医療に用いられる質を持ったiPS 細胞株が生み出せるか、③片親性ダイソミーを伴った細胞で懸念される劣性有害変異の蓄積の影響がないか、④インプリティング遺伝子の発現挙動がどうなっているか、をそれぞれ検討した。この研究の完成により、染色体異常を持った患者からiPS 細胞を作成し、培養状態にて染色体を修復したのちに、元の患者で機能が損なわれている臓器、細胞種を分化誘導し、移植するという再生医療が可能であることが示唆できる。
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