研究実績の概要 |
リソソームは細胞内外の物質を取り込んで分解する細胞内小器官である。リソソームはシリカや尿酸結晶などの結晶物、細菌毒素、脂質や薬剤などでしばしば損傷されることがわかっている。損傷を受けたリソソームは細胞にとって有害となるため、細胞は損傷リソソーム応答と総称される多段階のシステムでこれに対処しリソソームと細胞の恒常性を維持している。損傷リソソーム応答では選択的オートファジーの一つであるリソファジーやオートファジー・リソソーム生合成のマスター転写因子であるTFEBなどが働くことがわかっていたが、これらの詳細な制御機構やクロストークの有無については不明であった。我々はオートファジー制御因子の一部がTFEB活性化を引き起こしていることを見出し、新規のTFEB活性化機構を明らかにした。またこの新規のTFEB活性化メカニズムはリソソーム損傷を伴う腎症の悪化を防いでいることが明らかとなった。本研究結果をまとめ論文投稿し、現在リバイスを受けている(Nakamura et al., in revision)。さらに、TFEBのインターラクトーム解析から得られた結合パートナーの機能解析から、リソファジーとTEFB活性化のクロストークを担う重要な因子を見出し機能解析を続けている。今後これらの研究をさらに進めることで、リソソーム損傷を伴うことがわかっている2型糖尿病、動脈硬化、痛風などの生活習慣病さらには神経変性疾患の発症機序に関する新たな知見が得られると期待される。
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