研究課題
ヒトiPS細胞は再生医療あるいは創薬においては魅力的な細胞ソースであるが、分化誘導した心筋細胞は均質な集団ではなく、心房筋、心室筋、刺激伝導系等さまざまなタイプの心筋細胞が含まれたヘテロな集団であることが知られている。心筋細胞におけるばらつきは、細胞移植時の致死性不整脈の誘発や有効性(改善効果)のばらつき、あるいは創薬スクリーニングにおける再現性の低下に影響するため、分化心筋細胞におけるタイプ別選別法の開発が求められている。心筋細胞におけるタイプ別選別法のアプローチとして低コストかつ臨床応用に直結する“代謝制御”による手法を確立したいと考えている。本研究では、“代謝制御”により心筋細胞のタイプ別選別を行うことでばらつきを解消し、細胞移植治療や創薬へ応用することを目的としている。平成29年度はその基盤となるヒトiPS細胞由来心筋細胞の2次元大量培養法を確立し、一度に10億個の心筋細胞の作製が可能となった。また、in vivo心臓代謝解析を行い、心筋細胞における部位別代謝プロファイルを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は、平成30年度以降の基盤技術となるヒトiPS細胞由来心筋細胞の大量培養法の確立およびin vivo心臓代謝解析を目指した。ヒトiPS細胞由来心筋細胞の大量培養法に関して、強制通気2次元大量培養系を確立することに成功し、一度に10億個の心筋細胞の作製が可能となった。また、in vivo心臓代謝解析を行い、心筋細胞における部位別代謝プロファイルを明らかにした。上記により、おおむね順調に進展していると考えている。
平成30年度は分化心筋細胞におけるシングルセル代謝解析およびシングルセル収縮弛緩機能解析を行う予定である。平成29年度に確立した培養法により作成した心筋細胞における代謝をシングルセルレベルで解析し、in vivo心臓代謝解析により得られた代謝プロファイルデータを適用することで代謝的成熟度を判定する。また、シングルセル代謝プロファイルデータに機能解析も組み合わせることで、代謝プロファイルと心筋収縮弛緩機能における相関関係を評価する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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