研究課題/領域番号 |
17H05076
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
小野寺 敏幸 東北工業大学, 工学部, 講師 (10620916)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ガンマ線検出器 |
研究実績の概要 |
初年度は絶縁基板中に臭化タリウム(TlBr)結晶を育成する基礎検討を進めながら結晶育成に必要な電気炉を始めとした設備を導入した。 実施計画にあった結晶育成の前段階となるTlBr原料の精製では、フィルタ法に新たな吸着剤としてアルミナを使用しその有効性を検討した。その結果、特に正孔の輸送特性の改善がみられ、SPECTに用いるガンマ線を想定した57Coのガンマ線スペクトルでは約2倍のエネルギ分解能の改善が得られた。 新規育成装置を導入するまでに期間を活用し、既保有設備を用いた基礎検討では内径4mmのアルミナ基板内へのTlBr結晶の育成を試みた。育成したTlBr結晶を電子後方散乱回折(EBSD)を用いて結晶の品質を評価した結果、面全体に亘り概ね単結晶であることが分かった。育成したTlBr結晶から厚さ約0.7mmのTlBr検出器を試作し評価した結果、従来の方法で製作した検出器と比較して電荷輸送特性が低く僅かな抵抗率の上昇がみられたことから不純物による性能低下が示唆された。 新規に導入する電気炉は、プログラム制御により不活性ガス中で結晶育成が可能な構成とした。導入後、アルミナなどの基板を用いて結晶育成を試みたが、電気炉の設備不良が頻発したため度々の補修が必要となったため、当該年度中の本格的な結晶育成には至らず翌年度に延期した実験内容もあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験が遅延した原因は新規に導入した結晶育成装置に起因する。電気炉は計測される電気炉内の実際の温度と目標温度を判断し出力を制御する構成になっている。ところが仕様書に記載されている温度センサの種別が一致していなかったため電気炉の出力が異常に高くなったため、ヒーター部材の損傷と電気炉内の汚染が発生した。原因解明だけでなく修繕に期間を要したため試運転から本格的な運用まで遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
遅延した実験内容を翌年に繰り越すこととした。現状までで得られている実験結果をもとに基板とする絶縁材料の材質、形状の検討を進め、材料メーカへの手配を先行して進めている。部材選定の見通しがつき次第、評価用の検出器の検討を進める計画である。
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