今年度は設備不良のため前年度に実施できなかった新規電気炉を用いた絶縁材料中への臭化タリウム(TlBr)結晶の育成試験、結晶育成結果をもとにした本格的な絶縁材料の検討およびTlBr検出器の諸特性の評価を実施した。また、ガンマ線検出器として有望な材料の候補としてヨウ化アンチモン(SbI3)の基礎評価を行った。 育成試験では、高さ40mm、直径2mmの孔径をもつアルミナ柱とカーボンの台座を用いた。空孔部にTlBr原料を入れ、プログラムにより原料の熔融温度、熔融保持時間、育成速度を適宜調整し適切な制御条件を検討した。見出した温度条件をもとに仕様が異なるいくつかの絶縁材料かなる基板およびカーボン台座を組み合わせ良好なTlBr結晶が得られる条件を検討した。その結果、結晶が成長する基板垂直方向よりも基板側面からの放熱が想定以上に高いため空孔側面からの成長が進むため多結晶化しやすいことが分かった。そのため基板の材質にはアルミナよりも熱伝導性が低い石英などが有望であること分かった。 TlBrの成長方向に対する担体の輸送特性の依存性を見出すため移動度と寿命時間を独立に評価した。その結果、電子、正孔ともに移動度の変化は少ない一方、寿命時間は成長末端部にかけて急激に減少し、電子の方が顕著に現れた。また、抵抗率も末端にかけて減少することから高エネルギ分解能が得られるTlBr結晶は先端部から中央部の広範囲に広がっていることが分かった。 SbI3はTlBrよりも低温で結晶成長が可能である。検討の結果、担体の輸送特性が成長面に対して異方性が高く、また成長方位の制御も困難であるため本応用への適用は困難であることが分かった。
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