今年度は昨年度までの成果を活かし、基板に石英を用いた柱状TlBr結晶の育成と評価を進めた。また、本応用分野では今後、デバイスの微細電極化が進むことが想定されているため、従来の電極形成法に代わる手法としてフォトリソグラフィを用いたTlBr結晶への電極形成工程の開発も同時に着手した。 TlBr結晶の柱状育成では、基板をアルミナから石英に変え、育成時の温度プロファイルを適正化したことで育成時における基板周囲からの多形の発生が抑制できることが分かった。しかしながら、育成が進行しても一部に多結晶化がみられ、通常の融液成長法で育成したTlBr結晶と比較して電荷輸送特性は低下した。一方、TlBr結晶の抵抗率は一定の水準まで達し、デバイス動作に要求される耐圧性を有することが分かった。 フォトリソグラフィでは、複数のネガ、ポジ型レジストを使用し、個々のレジストとTlBrとの適合性を実験的に見出した。さらに、新たにリフトオフ型レジストの検討にも着手した。その結果、リフトオフ型レジストを用いたプロセスにおいて、従来の電極形成法と遜色のないデバイス特性が得られるプロセスの諸条件を見出すことができた。 本研究では、石英基板中に直径1mmの複数の柱状のTlBr結晶の育成にまで至った。今後は、得られた知見をもとに基板内部で生じる多結晶化を徹底的に抑制することで高エネルギー分解能を示す多画素型デバイスの実現とフォトリソグラフィによる高精細化が期待できる。
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