本研究の目的は国内に存在する複数の大規模医療・介護関連データベースを統合することで、医療・介護のフィールドを超えた患者縦断データを作成し、それを用いて臨床疫学・経済学研究を行うインフラを整備することである。そのためにi)共通IDの存在しないデータベース間のデータ突合手法の開発を行う。構築したインフラを用いて、以下の課題を明らかにする。ii)医療・介護アウトカムの地理的・経時的変化の可視化と規定要因を明らかにする。iii)医療・介護のフィールドを超えた、患者長期追跡データベースを作成し、診療行為や薬剤・介護サービスと長期的な医療・介護アウトカムとの関連を検証する。 本年度は共通IDの存在しないデータベース間のデータ突合手法の開発に取り組んだ。日本には、異なるデータベース間を突合するための共通IDが存在しない。そのため、収集母体の異なるデータベース間の突合は不可能である。しかし、データが同一粒度で集計されていれば、異なるデータベース間でもデータを連結することが可能である。また、Data Fusion などの統計学的手法を用いることでデータを個票レベルで突合することなく統計情報を取得する手法が開発されている。 しかし、データをデータベース間で突合するためには、各データベース間の情報粒度の単位を揃える必要がある。例えば、DPCデータベースは患者の1入院単位の情報粒度で情報が格納されており、NDBは月単位で情報が格納されている。これらの情報を適切に突合するためには情報粒度を同じ1入院単位に揃える必要がある。本年度、NDBのデータを患者のエピソード(入院・外来・調剤)単位にサマリするプログラムの作成を行い、開発に成功した。
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