研究課題
真核生物のゲノムには、トポロジカル関連ドメイン(TAD)と呼ばれる三次元構造が存在し、このドメイン内では配列上離れたプロモーターやエンハンサーであっても、近接して相互作用し、遺伝子発現が制御されることや、TADの境界にCCCTC結合因子(CTCF)が結合することが報告されている。また、トポロジカル関連ドメインと関係して、一つの転写活性化領域(エンハンサー)を複数の遺伝子が共有して共同して転写調節がなされることが知られてきた。ABO遺伝子のエンハンサーにおいても同様の機序が存在すると考えられたことから、エンハンサー欠失細胞を作製し、ABO周辺の遺伝子の発現変化について調べてみることとした。その結果、隣接する遺伝子以外にもやや遠くの遺伝子座においても遺伝子発現の変化が見られるものがあった。これはゲノムアノテーションデータによるGENEHANCERが示すデータに矛盾しないものであった。これらの実験結果から考察すると、一つの小さなTAD内における転写調節だけでなく、複数のTADが近接して転写調節を受けたり、小さなTADを内包する、より大きなTADによる転写調節が関与している可能性が考えられることから、より詳細な検討を通して、ABO遺伝子と周囲の遺伝子の転写調節機構について明らかにしていく。関係する遺伝子座には、生理活性と関係する遺伝子も含まれていることから、血液型との関係についても調べていく。
2: おおむね順調に進展している
ABO遺伝子エンハンサー欠失細胞は作製でき、遺伝子発現変化を調べることができた。また、新しいゲノムアノテーションデータが参照できることから、比較検討が容易に進んだ。
ABOエンハンサーを共有する他の遺伝子についてより詳細な検討を加え、血液型との関係について検討する。
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Leg Med.
巻: 30 ページ: 46-51
10.1016/j.legalmed.2017.11.005
巻: 32 ページ: 87-89
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