研究実績の概要 |
真核生物のゲノムには、トポロジカル関連ドメイン(TAD)と呼ばれる三次元構造が存在し、このドメイン内では配列上離れたプロモーターやエンハンサーであっても、近接して相互作用しする。これまでに我々はABO遺伝子の発現制御機構の研究を行い、転写開始に関与するプロモーター、第1イントロン内で翻訳開始点の下流5.8-kb (+5.8-kb site)、および遺伝子3’側で遺伝子の下流2.6-kb(+22.6-kb site)にエンハンサー(転写活性化領域)を同定した。そこで、CRISPR/Casシステムを用い、血球細胞、上皮細胞エンハンサー欠失細胞株を作製し、野生型と比較してどのような遺伝子の発現減少が見られるかをRNAシークエンス法およびリアルタイムPCRで調べた。その結果、胃癌細胞KATOIII細胞を用いた上皮細胞エンハンサー欠失細胞においてABO遺伝子の転写が低下し、さらにABO遺伝子下流に存在するOBP2B遺伝子の発現が約1/10に低下した。以上から、ABO遺伝子はエンハンサーの共有、染色体の高次構造を介した遺伝子の発現制御等の転写調節機構を受けていることがわかった。今後はOBP2B遺伝子の機能解析や、ゲノムアノテーションデータGenehancerを参考に、Chromosome Configuration Capture (3C, 4C)やenChIPを用いて、KATOIII細胞やK562細胞においてABO遺伝子エンハンサーと近接する領域の検索を行う。
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