研究課題/領域番号 |
17H05080
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
武田 朱公 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (50784708)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 認知症 / アルツハイマー病 / タウ / 免疫療法 / モデル / 糖尿病 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究計画では、アルツハイマー病が進行するメカニズムの解明を「タウ病理の神経細胞間伝播」という現象に着目して進める。申請者は既にアルツハイマー病の進行に関与する特殊なタウ蛋白を同定しており、この知見をもとに全研究期間内で以下の①-⑤の実験計画を遂行する。①タウの神経細胞間伝播の分子メカニズムの解明、②タウの神経細胞間伝播を修飾する因子の探索・同定、③免疫療法への応用へ向けた病的伝播タウの標的エピトープの同定、④タウ病理の進行過程を反映する病態バイオマーカーの探索、⑤糖尿病がタウ伝播に与える影響の評価。平成30年度は、それぞれの項目に関して以下の研究内容を実行した。 [①]タウの神経細胞間伝播の分子メカニズムの解明:病的タウの神経細胞間伝播の詳細なメカニズムを明らかにするため、タウ伝播をin vitroで評価するためのアッセイ系の確立と改良を進めた。今年度は、ハイコンテントイメージングを導入することで更なるハイスループット化を行った。[②]タウの神経細胞間伝播を修飾する因子の探索・同定:①で構築したアッセイ系を使用し、研究施設で利用可能なコンパウンドライブラリーを利用してタウの神経細胞間伝播を修飾する新規因子の探索を継続した。[③] 免疫療法への応用へ向けた病的伝播タウの標的エピトープの同定:タウリン酸化部位に焦点を絞り、伝播タウの除去・中和に最も最適なエピトープのスクリーニングを進めた。[④]タウ病理の進行過程を反映する病態バイオマーカーの探索:前年度までに確立したマウス髄液持続回収系のプロトコールの標準化を行った。また、本法の知財化と論文投稿準備を進めた。[⑤] 糖尿病がタウ伝播に与える影響の評価:糖尿病合併アルツハイマー病マウスモデルを確立し、その表現型解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記概要に記したように、本研究課題は①-⑤の研究項目から構成されている。平成30年度は計画書に沿ってこれらの項目を実行した。それぞれに関し期待されるプログレスが得られ、成果の論文化や知財化を進めることができた。 [①]タウの神経細胞間伝播の分子メカニズムの解明:昨年度までに確立したアッセイ系において、これまでFACSや通常の画像解析で行っていたタウ凝集体のカウントにハイコンテントイメージングを導入することで飛躍的にハイスループット化することが出来た。 [②]タウの神経細胞間伝播を修飾する因子の探索・同定:①で構築したアッセイ系を使用し、研究施設で利用可能なコンパウンドライブラリーを利用してタウの神経細胞間伝播を修飾する新規因子の探索を継続した。①の系のハイスループット化の成功により、実験効率を向上させることができた。 [③] 免疫療法への応用へ向けた病的伝播タウの標的エピトープの同定:タウリン酸化部位に焦点を絞り、免疫療法の標的として最適なリン酸化エピトープを概ね3ヵ所に絞り込んだ。 [④]タウ病理の進行過程を反映する病態バイオマーカーの探索:脳脊髄液マーカー開発のためのプレクリニカルモデルとして、覚醒下マウスから持続的に脳脊髄液を回収する系を確立した。またこの系の知財化、論文化を行った。 [⑤] 糖尿病がタウ伝播に与える影響の評価:糖尿病合併アルツハイマー病マウスモデルの表現型解析を概ね終了した。糖尿病がアルツハイマー病タウ病理に与える影響のメカニズムの一つを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は申請時の研究計画に沿って概ね順調に進行している。今後も計画に沿って研究を遂行するとともに、予定よりも早期に成果がまとまった場合は知財化や論文化を積極的に進める。
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