炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)は慢性消化管炎症をきたす疾患であり、本邦を含むアジア諸国でも増加の一途を辿っている。炎症性腸疾患の発症原因は未だ不明であるが、腸管粘膜に存在する免疫細胞、特にT細胞の過剰な活性化が疾患の引き金になっていると考えられている。腸管粘膜には炎症惹起に関わるhelper T細胞と炎症抑制に関わる制御性T細胞が存在しており、これら相反する性質を有するT細胞のバランスが腸管免疫の恒常性に重要である。近年、申請者らは腸管上皮間に存在し、炎症抑制的に働くCD4CD8αα陽性T(CD4IEL)細胞を同定し、その分化制御機構を明らかにした (Sujino T et al. Science 2016)。本研究では、腸管上皮CD4IELのさらに詳細な制御機構を明らかにするとともに、腸管恒常性、および炎症性腸疾患病態における本細胞の役割について検討した。 炎症抑制のT細胞(Treg)と腸管上皮CD4IEL細胞の分化過程において、腸管上皮CD4IELに分化する特定の遺伝子を同定し、CD4特異的に同遺伝子をノックアウトしたマウスを作成した。同マウスにおいては腸管上皮CD4IEL誘導細胞数は減少し、逆に同遺伝子をCD4特異的に過剰発現させるマウスではCD4IELが増加することが判明した。さらに炎症性腸疾患患者においても同遺伝子の発現が腸管上皮CD4IELでマウスと類似した関連性を有していることを見出した。
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