研究課題
核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease, NIID)は、成人発症で白質脳症と末梢神経障害を主徴とする神経変性疾患で、その原因は明らかではなかった。NIIDに関する遺伝子解析研究を行い、NBPF19の5' UTR(非翻訳領域)に存在するCGGリピート長の伸長がその原因であることを見いだした。当科で収集した28家系中26家系で本リピート伸長変異を同定するとともに、マレーシアの2家系においても本リピート伸長変異が存在することを示した。家系内で複数の発症者の解析ができた3家系では、共分離を確認した。コントロール1000名においては、43リピートが最長であったが、発症者では90-180リピートを示した。核内封入体病と類似した白質脳症を有する、眼咽頭型ミオパチー家系(oculopharyngeal myopathy with leukoencephalopathy, OPML)についても、同様のCGGリピートが関与しているのではないかと検討した結果、LOC642361/NUTM2B-AS1でCGGリピート伸長が存在することが明らかとなった。家系内4名の発症者で共有されていることが確認された。最後に、白質脳症のない、通常の眼咽頭遠位型ミオパチー(oculopharyngodistal myopathy, OPDM)症例について同様のCGGリピート伸長を探索したところ、筋病理学的にOPDMと診断された症例の38%でLRP12の5' UTRに存在するCGGリピートの伸長が認められた。本研究により、NIID、OPML、OPDMは新規のCGGリピート伸長病であり、同じCGGリピート伸長病によって生じる脆弱X関連振戦失調症候群(fragile X tremor/ataxia syndrome, FXTAS)とともに、それぞれ臨床的に一部オーバーラップを有している疾患群であることが判明した。
1: 当初の計画以上に進展している
核内封入体病、眼咽頭遠位型ミオパチー、白質脳症を伴う眼咽頭型ミオパチー家系において、それぞれNBPF19、LRP12、LOC642361/NUTM2B-AS1の非コード領域に存在するCGGリピートがその原因であることを示し、論文にアクセプト間近となったため。
未だ解読できていない疾患・症例のリピート伸長の全長解読を目指すと共に、臨床像と関係について検討する。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 6件) 備考 (3件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Nature Genetics
巻: 50 ページ: 581~590
10.1038/s41588-018-0067-2
Brain
巻: 141 ページ: 2280~2288
10.1093/brain/awy160
Internal Medicine
巻: 57 ページ: 3459~3462
10.2169/internalmedicine.1141-18
https://www.amed.go.jp/news/release_20180306-04.html
http://first.lifesciencedb.jp/archives/18095
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20180306.pdf