研究実績の概要 |
造血幹細胞は骨髄中に存在し、未分化性を保ちつつ生体内の生涯にわたる全ての血液細胞を供給することができる組織幹細胞の1つである。申請者は過去に造血幹細胞の休眠機構を明らかにすることで(Yamazaki et al.,2006)、造血幹細胞の冬眠状態維持にTGF-betaが重要であることを証明した(Yamazaki et al.,2009)。また、骨髄中のシュワン細胞によるTGF-betaの活性化が造血幹細胞の休眠を誘導することを報告した(Yamazaki et al.,2011)。さらには、骨髄中には骨髄特有のアミノ酸濃度が存在し、そのアミノ酸バランスを崩すことで造血幹細胞を制御できることも明らかにしている(Taya et al.,2016)。本プロジェクトでは申請者がこれまで報告してきた知見と経験を基に、骨髄微小環境における造血幹細胞の時間的動態を解析することで、複雑に入り組んだ造血幹細胞ニッチ細胞とその構造を明らかにし、in vitroにおける造血幹細胞の未分化性を保つ培養方法の確立を目指す足がかりにする基盤構築を目指している。今年度の研究実績としては骨髄環境の理解により新しい培養システムの構築を開発した(Ieyasu et al., Stem Cell Reports 2017)さらにはiPS細胞から骨髄環境を模倣した組織をテラトーマ内で誘導することに成功した(Tsukada et al., Stem Cell Reports 2017)。
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