研究課題
本年度は以下のような研究を行った。申請者はシートレーザー顕微鏡の扱いを熟知していることから、全骨髄構造を簡便かつ定量的に個々の細胞の位置情報などを解析することができる。しかし、これらの情報は極短い時間軸の情報でしかない。申請者はタイムラプスシステムとインキュベーターシステムをシートレーザー顕微鏡に加えることで4次元でのイメージング技術開発を行った。平成29年度に作製されたマウスを本技術を用い解析することで、造血幹細胞がどのような速さで、どのような経路をたどり動いているかが明らかするように試みた。さらには骨髄前駆細胞との比較を行うことで共通の支持細胞が存在するのか、もしくは全く別の支持細胞であるのか、造血幹細胞の動態と造血前駆細胞との動態比較を行った。平成29年度に作製された2種類のマウスを交配せずに、放射線照射したマウスに造血幹細胞を移植することで移植後の造血幹細胞の動態を細かな時間軸を設定することで、骨髄へのホーミング過程を解析する。また造血幹細胞にルシフェラーゼを高発現させ、かつ、超高感度in vivoイメージングシステムを用いることで1から5個程度の移植後の細胞からどのように造血幹細胞が分布していくのかを解析した。申請者は正常造血幹細胞における骨髄微小環境の解析を行うと共に、白血病細胞株を用いて解析を行った。申請者はすでに生体内に白血病発症遺伝子を発現するウイルスをマウスに投与することで造血幹細胞特異的にウイルスが感染し白血病を発症するシステムを構築している(Tajima Y et al.,unpublish data)。このマウスと造血幹細胞が接着した細胞特異的に蛍光標識できるマウスシステムを交配させることで、さまざまな白血病幹細胞と骨髄微小環境の関係性を明らかにすることを試みた。
3: やや遅れている
造血幹細胞や骨髄微小環境をモニタリングするマウスの交配スピードが予測よりも遅く、実験がスピーティーに行えなかった。しかし、1つ1つの実験結果は良いものであり、大枠での研究進捗には問題がない。最終年度の進捗に期待できる。
人工的な骨髄微小環境の構築とそれを用いた生体外における造血幹細胞維持平成29、30年度で取得した様々なデータと、平成28年度で終了した人工骨髄の構築というテーマで得られたデータを総合的に詳細数値化し解析し工学系研究と協力することで、造血幹細胞が未分化性を保てる骨髄微小環境を生体外で模倣することを目指す。また本研究はマウスを中心とした研究であるが、ヒト由来造血幹細胞においても同時に解析を行う。具体的には基礎的な解析データから構築された人工骨髄が造血幹細胞をどの程度の期間維持できるのか、その機能は生体内で維持された造血幹細胞と同等の能力を保持しているのか?など臨床応用にむけた基盤的な研究を行い将来的な血液学治療の研究を目指す。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 7件、 査読あり 7件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 8件)
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