研究課題
慢性期SIV感染カニクイザルに対するcombination antiretroviral therapy(cART)モデルを樹立するために、SIVmac239の直腸感染を行い、明確なセットポイントウイルス量(VL)を示す慢性持続感染が確認された8頭に関して、感染後68週の慢性感染期にcARTを1日1回皮下投与により開始し、その治療効果を検討した。まず、核酸系逆転写酵素阻害剤(AZT+3TC)の二剤によるcARTを行った2頭では、開始後4週までに目立ったVLの抑制は観察されなかった。一方で、核酸系逆転写酵素阻害剤、非核酸系逆転写酵素阻害剤、インテグラーゼ阻害剤(FTC+TDF+DTG)の三剤を用いた6頭においては、全ての個体で開始後数週間の内にVLは検出限界以下に抑えられ、この効果は3ヶ月以上継続することが観察された。次に、この一連のcART経過観察の諸過程における免疫の状態を評価した。まずcARTによりCD4/CD8の割合は上昇していることから、cARTによるCD4陽性T細胞の回復が示唆された。一方で、フローサイトメーターを用いた解析から1)T細胞の分化成熟度、2)T細胞受容体刺激依存的なサイトカイン産生能、3) SIV抗原特異的CD8陽性T反応、はそれぞれcARTの有無による影響を受けないことが明らかとなった。以上より、本慢性期SIV感染カニクイザルcARTモデルは、実際のcART治療中患者における潜伏感染細胞及び免疫学的状態を高度に反映していると考えられ、cART期の潜伏感染細胞を標的とした新規治療法の前臨床評価モデルとして有用であると期待される。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた通り、慢性期SIV感染カニクイザルに対するcARTのための治療プロトコールを確立し、in vivoで完全にウイルス複製を抑制することに成功した。
今後は確立した長期間SIV複製制御可能なcART治療プロトコールを用いて、選択した免疫賦活化剤のin vivoないしex vivo解析によるSIV潜伏感染細胞の再活性化能、ならびに抗原特異的CTL誘導能を評価することで、エイズ根治根治に向けた研究開発に繋げる。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)
International Immunology
巻: 31 ページ: 81~90
10.1093/intimm/dxy069
JCI Insight
巻: 3 ページ: 1~14
10.1172/jci.insight.95319