昨年度までに樹立したSIV慢性持続期にcARTを施したサル治療モデルを用いて、初年度にin vitroの系で同定した新規治療薬候補STINGリガンドc-di-AMPのin vivoにおける治療効果の検証を行った。2頭のc-di-AMP投与個体をそれぞれ生食投与個体と比較した結果、cARTの中断により、すべての個体においてウイルス量のリバウンドが観察された。問題点として、このような複雑な動物モデルにおいて、既存のウイルス学的、免疫学的評価系では、対象個体が少ない場合に治療効果を正しく評価することが非常に困難であった。そのため、本研究では、次世代型フローサイトメーターを用いた高次解析系を導入し、評価系の最適化を進めた。具体的には、cARTを施したサルの血液及びリンパ組織を用いて、潜伏感染細胞の排除に重要な抗原特異的T細胞応答が解析可能となり、また潜伏感染細胞の集積しているリンパ組織のT細機能解析系を新たに樹立し、さらに得られた多次元データを、機械学習を組み合わせた方法により解析する手法も確立した。結果、特筆すべき点として、リバウンド後のウイルス量はc-di-AMP投与の有無によらず、cART開始前のウイルス量と相関しており、cART開始前のウイルス量を治療効果の評価指標に入れる必要性が示唆された。 以上、現時点ではc-di-AMPの単剤投与で主だった治療効果を証明する結果は得られていないものの、今後対象となるサル個体数を増加し、新しく確立した評価系を用いて、個体ごとのさらなる治療効果の検証を行っていくことで、引き続きSTINGリガンドの治療薬としての可能性を検討していく。
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