本研究はライソゾーム病とオートファジー病の共通点を探ることを目的としている。遺伝性疾患であるライソゾーム病は様々な種類があるが希少疾患であるため比較検討することが難しい。そこでCRISPR/Cas9でライソゾーム病の細胞モデルを構築して病態の解析を進めている。前年度におおむね構築されたライソゾーム病のモデル細胞を用い、オートファジー、エンドサイトーシス、脂質の蓄積、ライソゾーム酵素活性を網羅的に評価した。その過程でオートファジーが一部のライソゾーム病でのみ特に低下していることが比較検討によって明らかになった(一部の結果は昨年度も報告したが、ライソゾーム病の種類を増やして解析を行った)。コレステロール定量との比較で、コレステロールの負荷がオートファジーを止めることを確認した。オートファジーが止まっているライソゾーム病のモデル細胞に対して複数の活性化刺激を加えたところ、ある刺激に対して反応してオートファジーが回復する疾患と全然反応しない疾患が含まれていることが分かった。従って、ライソゾーム病における病態は少なくともオートファジーにおいても一つでは無いことが明らかになった。本結果は同じ背景の細胞を同じ条件でアッセイするすることでしか得られない結果であると考える。今後はライソゾーム病とオートファジー病との関連、また外国人特別研究員の研究である細胞内小胞輸送に関わる分子の機能解析結果とのすり合わせを行い概念モデルを構築する。
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