研究課題/領域番号 |
17H05091
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 康治 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40775318)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リピートRNA / C9orf72 / DPR / RNA foci |
研究実績の概要 |
C9orf72遺伝子のイントロン領域に存在するGGGGCCリピートの異常延長は常染色体優性遺伝にて高い浸透率でFTDおよびその類縁疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こす。本研究課題では、申請者が確立したC9orf72のリピート延長変異の新規細胞モデルを用いて、特に異常RNAの分解システムに着目し、リピートRNAや申請者らの見出したDPRタンパクによる神経変性メカニズムを解析している。 計画2年目であるH30年度は、前年度、DPR発現レベルを指標としたsiRNAによる予備的なスクリーニングによって得られたリピートRNA分解酵素の候補因子について、バリデーション実験をすすめ、その妥当性を確認していった。すなわちスクリーニングにより同定した当該RNA分解酵素が単独で実際にリピートRNA分解活性を有するのかについて、蛍光標識済みの人工リピートRNAとリコンビナントタンパクの混合実験を実施し、本酵素のリピートRNA分解活性をin vitro 実験系においても実証した。さらにC9orf72変異患者由来細胞に対し、当該分子のsiRNAによるノックダウンを実施したところ、患者の細胞に含まれる内因性のGGGGCCリピートRNAが蓄積し、RNA fociが増加した。このことから患者の細胞においても、当該RNA分解系がリピートRNAの代謝分解に関与していることが示唆された。 これらの結果は、当該RNA分解酵素が、病原性リピートRNAの分解、代謝に実際に関与している可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度当初の計画を概ね達成できている。特にC9orf72変異保持患者由来の細胞において、当該酵素をノックダウンした際に、RNA fociの増加を確認できたことから、患者細胞における標的妥当性が確認されたことは重要であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
計画の最終年度となるH31年度は、C9orf72 FTLD細胞モデル等を用いて、FTLD病態において当該RNA分解酵素の活性が実際に障害されているのかについて検証していく。具体的には、病態分子であるDPRと当該RNA分解酵素の間に物理的相互作用があるのかどうか、またDPR存在時にin vitroで当該酵素の活性が毀損されるのか、等について検証していく。DPRは生物物理学的に極端な性質(電荷、凝集性)をもっていることから、通常の電気泳動法による検出には支障があるため、DPR存在下でのRNA検出に適した実験系の開発にも取り組む。最終的にこれまでの成果をまとめて英文論文として報告する予定としている。
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