C9orf72のイントロン領域におけるGGGGCCという6塩基の数百回以上にもおよぶ異常延長リピート変異は、家族性の前頭側頭葉変性症(FTLD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こす。変異保持者の細胞ではリピート領域を含むRNAの蓄積がみられ、このリピートRNAは開始コドン非依存性翻訳を受け、細胞障害性を有するジペプチドリピートタンパク(DPR)へと翻訳される。よってリピートRNAの蓄積を回避する手段を明らかにすれば、C9orf72関連FTLD/ALSの新たな治療法となる可能性がある。本研究ではリピート発現細胞、変異保持者由来の繊維芽細胞、in vitro RNA分解系を用いて、まずRNAエクソソームの活性サブユニットであるEXOSC10がリピートRNAの分解に直接関与することを明らかにした。続いてDPRがRNAエクソソームに及ぼす影響について検討したところ、アルギニン含有DPRはEXOSC10と結合し、RNAエクソソームの内因性基質を蓄積させた。すなわちアルギニン含有DPRがRNAエクソソームの活性を阻害することが明らかとなった。実際にアルギニン含有DPR発現細胞では共発現させたC9orf72リピートRNAの発現レベルが増加していた。これらの結果からアルギニン含有DPRによるRNAエクソソーム活性の阻害がC9orf72変異FTLD/ALSにおけるリピートRNA蓄積の機序となっている可能性が示唆された。これらの成果をまとめた英文論文をすでに投稿しており、現在改定中である。
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