アルツハイマー病(AD)は先進諸国を中心に多くの罹患者がいるが,その診断・治療法は未だ確立されていない.近年では,1)βアミロイド(Aβ)オリゴマーの生成,2)タウ凝集体の蓄積,3)神経細胞死という過程を経てADを発症するという概念が提唱されており,この概念を基盤とした病態解明および治療薬開発に関する研究が進められていることから,これらに対応したADの診断法の確立が求められている.本研究では今後の患者数の増加を考慮し,多数の画像診断によるAD検査を可能にするため,positron emission tomography(PET)に比べて汎用性に優れたsingle emission computed tomography(SPECT)用プローブの開発研究を行った. SPECT用タウ凝集体イメージングプローブの開発において,これまでに見出したpyridoimidazopyridine(PIP)およびbenzimidazopyrimidine(BIPM)の構造最適化研究を実施した.その結果,PIP骨格にモノメチルアミノ基を導入した[123/125I]PIP-NHMeがタウ凝集体に対する高い結合選択性を示した.さらに正常マウスを用いた体内放射能分布実験において,これまでに見出した[123/125I]PIP-NMe2に比べて高い脳移行性,および速やかなクリアランスを示すことが明らかとなった.以上のことから,[123I]PIP-NHMeがSPECT用タウイメージングプローブとして優れた性質を有することを見出した.
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