研究課題
標的アイソトープ治療においてアルファ線やオージェ電子のような高いLET(線エネルギー付与)をもつ荷電粒子を放出する放射性核種を用いた方法は、腫瘍部への線量付与が大きいため細胞致死効果が高いだけでなく、飛程の短さにより正常組織への影響を低減できることが期待されている。本研究では、がん細胞へ取り込まれ放出されるアルファ線やオージェ電子の局所線量評価ならびにその分布イメージング技術の開発を目的とした。これまでに開発したCR-39固体飛跡検出器を用いた計測技術を、At-211標識HER2抗体を用いた胃がんの肝転移モデルマウスの治療効果の実証実験に適用した。従来の方法では臓器毎の放射能を測定しバイオディストリビューションを得て線量評価を行うが、あくまで臓器レベルの放射能平均値でしか得られない。実証例では腫瘍部は正常肝に比べて3倍高い放射能と評価されるが、ミクロレベルでの不均一性を考慮した線量評価では、がん細胞組織には正常組織に比べて約12倍の線量が付与されており、治療効果を説明可能になった。物理計測技術と生物試料を融合した実験的研究によって、アルファ線局在集積によるがん殺傷効果の直接的なエビデンスを提示できるようになった。またCu-64から放出されるオージェ電子の線量評価法として、ヒドロキシルラジカルを捕捉して蛍光を呈するクマリン-3-カルボン酸を用いた化学線量計を適用することにより、Co-60水等価線量として評価することに成功した。モンテカルロシミュレーションと併用することによってベータ粒子とオージェ電子の線量寄与の切り分けが可能である。オージェ電子の飛程は数100nmであるためイメージングは難しいが、この手法を用いれば単一細胞あたりの線量付与を定量評価できると考えている。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Nuclear Medicine
巻: in press ページ: in press
10.2967/jnumed.120.249300
日本写真学会誌
巻: 84 ページ: 22-27