研究課題
本研究では大腸癌の肝転移形成や大腸癌の薬剤感受性に関わる新たな細菌の同定とそのメカニズムを解明し、腸内細菌を標的とした大腸癌の新しい治療法や薬剤感受性および副作用を予測するバイオマーカーの開発につなげるための研究を行う。熊本大学消化器外科で切除された約600 例の大腸癌原発巣切除例と約200 例の転移巣切除例のデータベースの構築およびquantitative polymerase chain reaction法で細菌を測定するためのプライマー設計が終了した。大腸癌原発巣300例および転移巣100例の切除標本からDNAを抽出し、大腸癌と関連することが示唆されているFusobacterium nucleatum、Escherichia coli、Bacteroides fragilis、Enterococcus faecalis、Bifidobacteriumの存在量をquantitative polymerase chain reaction法を用いて測定した。大腸癌転移巣においてFusobacterium nucleatumが検出された症例は転移巣切除後の予後不良と関連した(P = 0.031)。今後、約200例まで症例を追加して検討する予定である。大腸癌術後の縫合不全は重大な合併症の1つで、患者のquality of lifeの低下、入院期間延長、予後不良と関連することが報告されている。大腸癌原発巣組織中にBifidobacterium genus (20% vs. 6.3%, P=0.004) が検出された症例では縫合不全発生率が有意に高かった。さらに大腸癌肝転移巣に浸潤するCD8陽性T細胞の発現を免疫組織化学法で評価するための条件設定も終了している。
2: おおむね順調に進展している
熊本大学消化器外科で切除された約600 例の大腸癌原発巣切除例と約200 例の転移巣切除例のデータベースの構築およびquantitative polymerase chain reaction法で細菌を測定するためのプライマー設計が終了し、大腸癌原発巣300例および転移巣100例の切除標本からDNAを抽出し、quantitative polymerase chain reaction法を用いて、大腸癌と関連することが示唆されている細菌の測定が終了している。さらに大腸癌肝転移巣に浸潤するCD8陽性T細胞の発現を免疫組織化学法で評価するための条件設定も終了している。大腸癌転移巣においてFusobacterium nucleatumが検出された症例は転移巣切除後の予後不良と関連を認めており、おおむね順調に進展していると考えられる。
今後は大腸癌肝転移巣における細菌の解析を約200例まで症例を追加し、大腸癌肝転移巣に浸潤するCD8陽性T細胞数との関連を解析し、研究成果を論文発表する予定である。また大腸癌術後の縫合不全発生と腸内細菌の関連についての研究成果を論文発表する予定である。さらに細菌のデータと当科のデータベースに管理されている化学療法の効果や副作用に関するデータを比較し、大腸癌の抗癌剤や血管新生阻害薬であるベバシズマブや抗EGFR(上皮細胞増殖因子受容体)抗体であるセツキシマブ・パニツムマブの感受性、副作用に関連する細菌を明らかにする。
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Surg Oncol.
巻: 26 ページ: 368-376
10.1016/j.suronc.2017.07.011