研究課題
本研究では大腸癌肝転移に対する抗腫瘍免疫応答や薬剤感受性に関わる新たな細菌の同定とそのメカニズムを解明し、腸内細菌を標的とした大腸癌の新しい治療法や薬剤感受性および副作用を予測するバイオマーカーの開発につなげるための研究を行う。大腸癌肝転移巣の切除標本からDNAを抽出し、大腸癌と関連することが示唆されているFusobacterium nucleatumなど腸内細菌の存在量をquantitative polymerase chain reaction法を用いて測定した。さらに肝転移組織中のCD8陽性T細胞および抗腫瘍免疫応答の抑制に働くことが知られているmyeloid-derived suppressor cell (MDSC)を免疫組織化学染色により評価した。大腸癌肝転移切除例181例で、8例 (4.4%)の大腸癌肝転移巣にFusobacterium nucleatumを認めた。大腸癌肝転移巣に浸潤するCD8陽性T細胞が多い症例は肝転移巣切除後の無再発生存率が有意に良好であった (P = 0.024)。大腸癌肝転移巣にFusobacterium nucleatumが検出された症例は腫瘍内に浸潤するCD8陽性T細胞が有意に少なかった (P = 0.033)。さらに大腸癌肝転移巣にFusobacterium nucleatumが検出された症例は、腫瘍内に浸潤するMDSCが有意に多かった(P = 0.015)。以上の結果から、Fusobacterium nucleatumが大腸癌肝転移巣において抗腫瘍免疫応答の抑制に関与している可能性が示唆された。今後は肝転移組織中のマクロファージや腫瘍細胞におけるVEGFの発現を免疫組織化学染色により評価し、大腸癌肝転移巣におけるFusobacterium nucleatumとの関連を解析する。そして、その結果を論文発表する予定である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
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