研究課題/領域番号 |
17H05095
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
板谷 慶一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70458777)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 成人先天性心疾患 |
研究実績の概要 |
・成人先天性心疾患(ACHD)に特化した Heart Teamの構築を行い、術前検査、術前カンファ、手術、術後評価を行った。ACHDに対する手術適応を明確化のため4D flow MRIを用い44例のACHD症例、10例の健常例に対して体心室系と肺心室系に分け、心室容積、駆出率、心拍出量、肺体血流比、弁逆流量、エネルギー損失などを定量し、加速血流、螺旋流などの血流分布を評価した。手術適応患者においてはエネルギー損失が健常例と比べ有意に増大し、11例の術前後の評価から手術後には著明に減少することが判明した。また、解析のプロトコルやレポートフォーマットが確立し、ソフトウェアの問題点が洗い出された。 ・右心系弁膜症手術22例から左室拡張能の指標であるtotal IVPD > 2.0 mmHg, mid to apical IVPD > 1.0 mmHgであれば右心系の手術による左心容量負荷によりしばしば起こる術後左室拡張不全を免れることが判明した。 ・Fontan症例6例でCFD仮想手術シミュレーションを行い、成人期の再手術加療を行い良好な術後経過を得ている。また冠動脈血行再建や大動脈弓での血行再建の術式検討を仮想手術シミュレーションで行い手術に適用した。 ・右心負荷疾患で僧帽弁輪形態に変形を来たす症例を経験し、左房内で特有の血流動態を示すことが判明した。弁輪形成により術後の僧帽弁閉鎖不全の悪化を防ぎ、左房内血流も正常化することが判明した。 ・京都大学数学科との共同で渦のトポロジーの評価を行い、プレリミナリーな心不全例と健常例との渦パターンの差異を検証し、不全心では渦の閉じ込めが容易に起こるような渦構造にあることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りの研究計画で進行している。データ管理のために雇用した秘書が極めて優秀である。昨年は大型タワーPCを購入し、数値流体解析に関して商用ライセンスの離脱を図り、よりシステマティックな血流解析のプロトコルを完成させつつある。また4D flow MRIでは産学連携として行っている本研究の協力者に当たるCardio Flow Design側での事業化がシステマティックになりソフトウェアのブラッシュアップが図られている。 一方で臨床研究としては多少回り道であったが診療体制の構築から始めたことが症例数の増多に寄与した。手術症例は月に2件程度成人先天性心疾患手術が施行され、術前検査としての研究参加症例が予想を上回り増多した。
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今後の研究の推進方策 |
・ファロー四徴症類縁疾患に対する右室流出路狭窄、肺動脈弁逆流、三尖弁逆流に対する評価方法としての4D flow MRIのプロトコルの確立と 有用性の検証。⇒本年度の研究計画としては術前患者の解析症例数(毎週1例)を蓄積するとともに手術術後評価並びに経過観察患者の再評価を行い、手術介入がどの程度のreverse remodelingをもたらし、また経過観察で悪化をたどる症例のpredictorを血流指標の中からめどをつける。 ・大動脈基部疾患の血流と手術適応に関して。⇒大動脈基部拡大をきたす成人先天性心疾患例は左室流出路と大動脈弓の形態が滑らかでないre routingを行われていた症例に多く、4D flow MRIでは上行大動脈内にspiral flowを認めることが分かった。⇒大動脈基部拡大例をできるだけ多数解析を行い、原疾患や小児期の心内修復術式ごとに分類し、血流のspiral patternとの関連を調べる。またspiral flowの定量化と してhelicityを定量できるようにソフトウェアを再編し、これら基部拡大疾患のhelicityを検証する。 ・TCPC術後の肝因子再分配に関する再手術術式の検討。⇒単心室例での下大静脈欠損例ではしばしば肝静脈が独立し、左右肺に均等に流入しないため不均衡分布を生じ、チアノーゼの原因となる。⇒術後の4D flow MRI再評価を行いCFD解析の妥当性を検証する。
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