研究課題
これまでの成果において、変形性関節症の早期病態に関与する候補因子を2つにしぼることができた。一つは軟骨細胞における炎症シグナルの新規因子としてG protein-coupled receptor kinase 5(GRK5)を同定した。2つ目はFOXO転写因子のターゲット遺伝子であり、細胞の異常タンパク異化に関与する因子であるdecidual proteininduced by progesterone (DEPP)を同定した。それぞれの因子の軟骨細胞における機能を解析するとともに、これまでに作成したノックアウトマウスを用いて、膝内側半月板不安定モデルを作成後、4週(早期)の軟骨変性を特殊染色にてスコア化し、野生型マウスと比較・解析した。GRK5については、GRK5 ノックアウトマウスにおいて野生型に比較し、著明な炎症性サイトカインやプロテアーゼの発現低下を認めた。GRK5インヒビターなどを用いて培養軟骨細胞での詳細な機能解析を行った。さらに、GRK5インヒビターをマウスOAモデルへ関節内投与を行い、軟骨変性抑制効果を明らかとした。これらの内容は、関節症研究のトップジャーナルであるArthritis and Rheumatologyへの掲載が決まった。GRK5インヒビターを治療薬として臨床応用する計画を立案し、次相へ進めている。DEPP については、CRISPR/Cas9システムを用いて作成したノックアウトマウスの解析を行っている。生後早期の個体より軟骨細胞を採取し、マイクロアレイによる機能解析を開始した。マウスOAモデルを作成し、関節軟骨変性に関わる表現型の解析を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
同定した疾患関連遺伝子のin vitroでの機能解析とノックアウトマウスの作成を滞りなく遂行し、詳細な解析へと進めることができた。GRK5に関する実験結果を論文発表することができた。また、GRK5インヒビターを治療薬として、国内特許出願を行い、臨床試験までのロードマップを作成した。基礎研究から臨床試験へと展開する足掛かりを作ることができた。
同定した2因子についての機能解析を引き続き継続する。両因子ともにノックアウトマウスの作成が完了しており、軟骨細胞の解析・変形性関節症モデルの作成などにより滞りなく研究を推進する。GRK5に関連した展開では、新因子としてIKKイプシロンという細胞内タンパクを新たに同定した。他の疾患関連因子の同定とそれらのクロストークを明らかにし、多角的な課題の遂行を目指す。また、同定した因子から治療薬開発へ展開するプロセスを重視していく。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (5件)
Arthritis and Rheumatology
巻: 72 ページ: 620-631
10.1002/art.41152.
Journal of Orthopaedics
巻: 20 ページ: 177-180
10.1016/j.jor.2020.01.042.
Journal of Biological Chemistry.
巻: 294 ページ: 17555-17569
10.1074/jbc.RA119.009409.