研究実績として、変形性関節症の早期病態に関与する候補因子を3つ同定できた。 1つ目は、軟骨細胞における炎症シグナルを調節する新規因子としてG protein-coupled receptor kinase 5(GRK5)を同定し、その機序はNFκBの活性化の制御であることを明らかにした。GRK5 ノックアウトマウスにおいて野生型に比較し、著明な炎症性サイトカインやプロテアーゼの発現低下を認めた。さらに、GRK5インヒビターをマウスOAモデルへ関節内投与を行い、軟骨変性抑制効果を明らかとした。これらの内容は、Arthritis and Rheumatologyに掲載された。GRK5インヒビターを治療薬として臨床応用する計画を立案し、次相へ進めている。また、GRK5の滑膜炎発症に関する研究も行い、その成果はScientific Reportsに掲載された。 2つ目は、FOXO転写因子のターゲット遺伝子であり、細胞の異常タンパク異化に関与する因子であるdecidual proteininduced by progesterone (DEPP)を同定した。その軟骨細胞における機能を解析するとともに、CRISPR/Cas9システムで作成したノックアウトマウスを用いて、膝内側半月板不安定モデルを作成し、DEPPノックアウトマウスでは軟骨変性が早期に発症することを明らかにした。その機序は、ミトコンドリアにおけるオートファジーを介していた。研究成果は、FASEB journalに掲載された。 3つ目として、変形性関節症軟骨においてNFκBの活性化に関与する新しいキナーゼを同定し、ヒトサンプルおよび軟骨細胞で機能解析を行った。その阻害薬の関節内投与が軟骨変性を抑制する効果を明らかにし、現在論文投稿中である。
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