研究課題
広島大学小児腫瘍グループに過去約20年間に保存され、予後調査が完了している神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫、横紋筋肉腫を含む約1000例のうち、治療前の初代培養にて腫瘍細胞のみ選別され、血漿が同時に保存されている200検体、樹立株23株、腹水・胸水80検体を対象として、本年度は無治療例(176例)を検討した。1,腫瘍特異的選別マーカーの検出::既存の細胞株、樹立株の培養液中の遊離核酸およびエクソソームを抽出し、次世代シークエンサー(NGS、ilumina Hiseq2500)を用いて腫瘍特異的な遺伝子変化(変異、欠失、転座)、miRNA発現を検索した。2,エクソソームの同定と抽出:当大学最新のサーマル電解放出型走査型電顕(日本電子)を用いて、エクソソームのがん細胞表面の局在、培養中の動態、患者血漿中の局在を検討する。血漿・体液(胸水・腹水)や培養液のエクソソームのRNA 量について測定し、miRNAの発現をNGSにて解析した。3,遊離DNA (cfDNA)抽出:血漿・体液(胸水・腹水)や培養液中のcfDNAを抽出し、2と同様に定量するとともに、デジタルPCR法で断片化を検索し、担癌児での疾患や病期、年齢別のcfDNA抽出量の検討の上、周知の遺伝子異常(MYCN増幅、CTNNB1変異、WT1変異など)を含めた遺伝子変化について、NGSにて測定したが、機器故障のため遅延した。これらから、Cancer fluid biopsyへの評価として、生検あるいは摘出されたがん組織のDNAから検出される遺伝子変化、キメラ遺伝子 miRNA発現パターンとの関連を検索したところ、cfDNAでは腫瘍細胞そのものの遺伝子変化はほぼ同定された(98%)。一方、miRNAでは一致率が62%前後であり、血漿中miRNAは腫瘍以外の因子の関与が示唆された。
3: やや遅れている
1.腫瘍特異的選別マーカーの検出::既に遺伝子異常が判明している腫瘍の腫瘍由来のDNAと診断時血漿(血清)由来遊離DNA(cfDNA)を用いた次世代シークエンサー(Cancer Panel等)にて遺伝子異常をスクリーニングとデジタルPCRでの検証は順調であったが、次世代シークエンサーの不調のため一部の検討が遅延した。2. エクソソームの同定と抽出:サーマル電解放出型走査型電顕を用いて、エクソソームのがん細胞表面の局在、培養中の動態、患者血漿中の局在は検討し得た。血漿・体液(胸水・腹水)や培養液のエクソソームのRNA 量について測定したが、機器の不調でmiRNA発現解析が遅延した。3. 遊離DNA (cfDNA)抽出:血漿・体液(胸水・腹水)のcfDNA抽出量の検討の上、周知の遺伝子異常(MYCN増幅、CTNBB1変異、WT1変異など)を含めた遺伝子変化について、NGSの測定が、機器故障のため遅延した。上記から、NGS 解析が一部遅延しており、機器の更新も含めて検討が必要と考えらえれた
平成30年度以降は、広島大学の小児がん検体と細胞株とともに、治療経過中の血漿検体1000検体と腹水・胸水80検体を遊離核酸の対象とし、また患者の血液検体を診断時と治療中に同意を得て採取し、平成30年までに臨床応用すべく臨床試験へ盛り込んでいく。遅延している次世代シークエンサー解析は機器導入も考えつつ、検討を進める。1.Cancer fluid biopsyのバイオマーカー確定:遺伝子変化との相補性、部位、進行度による陽性率、治療中の経過、再発時のデータなどから、cfDNAにおける各小児悪性腫瘍のバイオマーカーを同定する。2.miRNAによるバイオマーカーの確定:診断時に血漿や体液から抽出したエクソソーム内のmiRNA発現量、治療経過中の発現量を定量し、腫瘍内miRNA量との相関を検索し、各小児悪性腫瘍のなるmiRNAのバイオマーカーを同定する。3.Cancer fluid biopsyの臨床例への応用: 新規症例あるいは奏功例、難治例、再発例の検証:実際の小児がん症例の血漿の遊離核酸解析を行い、実際の診断、治療効果の判定、早期再発のモニタリングとしてベッドサイドで検証できるシステムを構築する。また、体液(胸水・腹水)中の遊離核酸、miRNAの継時的解析から、治療効果やフォローアップに有用性を検証する。上記の結果から、Cancer fluid biopsyとして、臨床試験への候補の選別と共に、遊離核酸やmiRNAの解析データから、個々の腫瘍に有効な薬剤の選別システムの確立、これらのマーカーを用いたオーダーメイド医療のガイドラインを作成する。
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Human Pathology
巻: 66 ページ: 177-182