研究課題
癌の骨転移によって生じる骨痛は、腫瘍の進行に伴い高頻度で発生し、患者に耐え難い苦痛を与える。骨痛はNSAIDS やオピオイド系鎮痛薬が効きにくいため、緩和治療には既存の鎮痛薬による治療に加え、骨痛病態を解明し多方向からの集学的アプローチが必要であるが、骨痛病態の形成機構については未だ不明な点が多い。本研究では、骨組織を構成する細胞で大多数を占める骨細胞が、骨内を走行する痛覚神経とコネキシン(Cx)43 介した細胞間小分子輸送ネットワークを構築することに着目し、骨細胞と痛覚神経間で痛みを増悪する情報伝達システムが存在することを明らかとし、これを断ち切ることで効率的な骨痛治療を開発することを目的とした。これまでに、骨細胞の細胞突起が作るネットワークは、骨細胞同士のみならず知覚神経とも接触し、Cx43によるギャップ結合が介在することを確認した。また、小分子輸送が両細胞間で行われることを見出した。さらに、癌の骨転移骨痛動物モデルとして、E0771 マウス乳癌細胞脛骨移植モデルを作成し骨痛をvon Frey testで経時的に計測したところ、腫瘍の増大に伴い骨痛の増強を認めたが、 Cx43 阻害薬 GAP27 の投与や、骨細胞特異的Cx43ノックアウトマウス(Cx43 cKOマウス)においては骨痛は減弱したことから、Cx43 により構築される神経細胞と骨細胞間ギャップ結合が癌の骨転移骨痛の増悪メカニズムに関与することが考察された。 尚、Cx43 阻害薬 GAP27による明らかな腫瘍増殖抑制効果は見られなかった。Cx43を介して骨細胞と神経細胞間で輸送され、神経興奮を誘導する小分子の候補をマイクロアレイから絞り込み、骨細胞特異的欠損マウスの作成を引き続き行った。CRISPR/CAS9システムで当該分子の両端にLoxP配列の組み込が完了しDMP-1 Creマウスと交配中である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Bone Oncology
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