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2017 年度 実績報告書

頭頸部肉腫の分子病理学的研究:病理診断応用と革新的抗腫瘍戦略基盤の構築

研究課題

研究課題/領域番号 17H05105
研究機関昭和大学

研究代表者

常木 雅之  昭和大学, 歯学部, 助教 (40714944)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード血管肉腫 / Survivin / YM155 / Hippo経路 / 細胞増殖 / 細胞死 / 希少がん / 肉腫
研究実績の概要

具体的な研究内容:難治性の希少がんである血管肉腫について重点的に解析を行った。国立がん研究センター、琉球大学より85例という世界的にみても最大規模の症例を蒐集し、良性腫瘍・腫瘍類似疾患である血管腫(54例)、膿原性肉芽腫(34例)を対照症例として、Hippo経路ならびに増殖因子Survivinの発現解析を行った。その結果、血管肉腫全例において腫瘍細胞核における特徴的なSurvivin発現が確認され、その発現様式は、患者生存率とは相関しなかった。また、Survivin発現の背景には、Hippo経路抑制機構が存在していることが明らかになった。Survivin発現は良性腫瘍や腫瘍類似疾患においては明らかではなく、血管肉腫に特徴的であることが判明した。同時に、ヒト血管肉腫細胞株(ISO-HAS-B)を東北大学細胞バンクより入手し、Survivin抑制系による機能解析を行った。その結果、Survivinは、血管肉腫細胞においても細胞増殖を正に制御し、Survivinを発現抑制すると、細胞死をきたすことが明らかになった。そこでSurvivin抑制薬であるYM155を細胞添加したところ、細胞増殖能が抑制され、Survivin発現抑制を行った時と同様の細胞死をきたした。また、細胞レベルにおいてもHippo経路抑制が生じており、Survivin発現の一部は、Hippo経路によって制御されていることが明らかになった。

意義と重要性:ヒト臨床検体とヒト由来細胞株の双方向から、ヒト血管肉腫においてSurvivinが特徴的に腫瘍細胞増殖を正に制御し、Survivin発現背景の一部はHippo経路抑制によって説明可能である。また、Survivin抑制薬YM155が血管肉腫細胞レベルにおいて奏功し、細胞増殖を効率に抑制することが明らかになったため、YM155を用いた新規抗腫瘍戦略の展望が開けた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

対象となる肉腫の中で、血管肉腫について重点的に解析を行うことができ、腫瘍細胞増殖機構の一端を明らかにするとともに、抗腫瘍戦略となりうる抗腫瘍薬の絞り込みに成功したことは大きな進捗であった。同時に、対照病変である良性腫瘍・腫瘍類似疾患についても解析を行うことができ、「悪性」との分子生物学的異同を明確にしたことは血管肉腫の分子病理学的理解に貢献したと自負している。また、研究の進捗状況を国際専門誌に学術論文として公表することができた。

今後の研究の推進方策

継続して、血管肉腫の細胞レベルでの細胞増殖制御機構の研究を継続するとともに、他の肉腫である線維肉腫や脂肪肉腫などについても本年で得られた知見を応用して研究を展開していきたいと考えている。
臨床検体は引き続き所属機関や共同研究先での倫理委員会承認を得て蒐集し、貴重な希少検体の解析を進めていきたい。同時に、細胞レベルの解析を行い、臨床検体での分子動態の背景にある分子機構を明らかにしていきたい。また、研究は常に治療戦略という臨床的還元を目指したものにしていきたい。そのためにも、細胞動態を制御する鍵となる分子を同定し、その抑制薬あるいは中和抗体による分子治療戦略を意識した研究展開としていきたい。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)

  • [国際共同研究] Yale University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Yale University
  • [雑誌論文] Survivin: A novel marker and potential therapeutic target for human angiosarcoma2017

    • 著者名/発表者名
      Tsuneki Masayuki、Kinjo Takao、Mori Taisuke、Yoshida Akihiko、Kuyama Kayo、Ohira Aoi、Miyagi Takuya、Takahashi Kenzo、Kawai Akira、Chuman Hirokazu、Yamazaki Naoya、Masuzawa Mikio、Arakawa Hirofumi
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 108 ページ: 2295-2305

    • DOI

      10.1111/cas.13379

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] CD44 Promotes Inflammation and Extracellular Matrix Production During Arteriovenous Fistula Maturation2017

    • 著者名/発表者名
      Go Kuwahara, Takuya Hashimoto, Masayuki Tsuneki, Kota Yamamoto, Roland Assi, Trenton R. Foster, Jesse J. Hanisch, Hualong Bai, Haidi Hu, Clinton D. Protack, Michael R. Hall, John S. Schardt, Steven M. Jay, Joseph A. Madri, Shohta Kodama, Alan Dardik
    • 雑誌名

      Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology

      巻: 37 ページ: 1147-1156

    • DOI

      10.1161/ATVBAHA.117.309385

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Increased Oxidative Stress and Hypoxia Inducible Factor-1 Expression during Arteriovenous Fistula Maturation2017

    • 著者名/発表者名
      Sadaghianloo Nirvana、Yamamoto Kota、Bai Hualong、Tsuneki Masayuki、Protack Clinton D.、Hall Michael R.、Declemy Serge、Hassen-Khodja R?da、Madri Joseph、Dardik Alan
    • 雑誌名

      Annals of Vascular Surgery

      巻: 41 ページ: 225-234

    • DOI

      10.1016/j.avsg.2016.09.014

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Survivin: a novel marker and potential therapeutic target for human angiosarcoma2017

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Tsuneki, Takao Kinjo, Aoi Ohira, Takuya Miyagi, Kenzo Takahashi, Akira Kawai, Hirokazu Chuman, Kenji Mishima, Hirofumi Arakawa
    • 学会等名
      第76回 日本癌学会
  • [学会発表] Survivinはヒト血管肉腫における新規のマーカーで治療標的分子となりえる2017

    • 著者名/発表者名
      常木雅之
    • 学会等名
      第28回 日本臨床口腔病理学会
  • [学会発表] Non-canonical mitophagy induced by Mieap and its role in tumor suppression via ferroptosis-like cell death2017

    • 著者名/発表者名
      Yasuyuki Nakamura, Masayuki Tsuneki, Makoto Yamamoto, Takao Kinjo, Manabu Futamura, Akiko Kuma, Hirofumi Arakawa
    • 学会等名
      第76回 日本癌学会

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-05-23  

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