研究課題/領域番号 |
17H06089
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤澤 彰英 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (60222262)
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研究分担者 |
井戸 毅 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (50332185)
稲垣 滋 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (60300729)
飯尾 俊二 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (90272723)
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研究期間 (年度) |
2017-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | プラズマ乱流 / トモグラフィー / 重イオンビームプローブ / 対称性の破れ / クロススケール結合 / 大域性 / PLATO |
研究実績の概要 |
令和元年度にプラズマ生成部が完成したプラズマ乱流統合観測装置PLATOに関して、観測対象にたるトカマク配位ー閉じ込め性能を持つープラズマを生成するための整備および実験を実施した(藤澤が統括)。まずプラズマ生成の基礎となる高真空を得るために、本体に接着できるラバーヒータを購入しベーキングを行い1x10-5Pa程度の真空を得た。プラズマ制御に関しては、応用力学研究所技術部の支援を受けてトロイダルおよびポロイダルコイル電源の2系統、プラズマとなるガス、コイルなどの装置およびプラズマから得られたデータを収集するためのシステムを統括的に管理できるシステムが完成した。現在は、さらに実験環境も含めて高度化に努めている。 基幹計測系としてはプラズマの基礎的な情報を得るためのロゴスキーコイルやフラックスループの信号を得ている。主体となる乱流計測器であるトモグラフィー においては、水素アルファー線を1断面で観測する準備が整っている(担当 藤澤)。また重イオンビームプローブは、分析器が2台準備され本体に設置されている(担当 井戸)。2021年度には、ビーム入射部をPLATO本体に設置し計測開始するための整備を進めている。 支援研究として、PLATOプラズマ平衡および不安定性に関するシミュレーションも進んでいる。また、PANTA実験(稲垣が統括)では、トモグラフィー 基礎実験を実施し、3断面の同時計測が成功し結果は4D(時間を含める)トモグラフィーとしての論文が掲載されている。トモグラフィー 画像の解析法も開発され、トモグラフィー による温度密度の同時計測に対する基礎実験、アンサンブルの最適化による条件付き平均法の提案、Fourier-Rectangular関数変換を用いたモード偏光解析などの方法など、論文として数多くの成果が掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PLATO装置が完成し、電子サイクロトロン加熱(ECH)を用いたプラズマが生成されている。PLATO装置の実験環境も、制御室、実験室が十分に整い、効率的に実験が行える状況になっている。プラズマ生成と維持、データ収集の制御も一括して中央管理できる状況になり、十分な進展が見られている。ただ、当初の期待に反して、ECHを用いた場合に、OHコイルによる電圧を印加しても、現状ではプラズマ電流が誘導されず、閉じ込め配位が形成されておらずECH以外の方法によるプラズマの着火法の導入を検討している。国際的に見ても、同種装置の立ち上げには数年の年月を必要となることもあり、十分予想されたことでもあり、この点においては、若干の遅れがあるものの着実に進展していると考えている。今年度には、プラズマ生成の基礎となる、より優れた装置の真空状態の生成、プラズマのブレークダウンにおけるヘリシティ入射やECHによる種となる電流生成などプラズマ立上げ法を開拓することで、期待するプラズマが生成できると考えている。プラズマ電流の立ち上げの問題は、設計上電流を流すために必要な周回電圧が得られないITERなどの大型装置でも現在問題になっている重要な問題である。その機構の探求は、PLATO実験の新しい副次的な研究の方向を示している。一方で、PANTAにおけるトモグラフィー 計測は、3断面の観測が可能となり、磁場方向におけるプラズマ構造の不均一性やプラズマの自発的揺動の振源が、プラズマ源とは一致せず、空間的に局在していることが発見されるなど、非対称性に関する新たな知見が得られ、予想以上に進展が見られている。シミュレーションとの協働も順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、PLATO装置においては、第一に観測対象にたるトカマク型配位をもつプラズマを生成することを目的として研究を進める。プラズマブレークダウンの状況を改善するために、アーク電極を真空容器内に設置しプラズマの着火効率を高め電流を流れやすくする。また、よりその効率を更に高めるために、通常、プラズマ電流の、定常維持も視野に入れて広く実施されているヘリシティー入射法(HI)を補助的に試みる。HIを用いることでプラズマ立上げ時のOHフラックスの消耗を補えより優れたトカマクプラズマを生成できる利点もある。またECHの斜め入射による種となるプラズマ電流の誘導法も検討する。第2に、PLATOプラズマのパラメータをモニターするための基礎計測の整備を実施する。観測対象として十分なプラズマ生成に成功したのちには早急にトモグラフィー を装置に設置し、世界初となる観測を開始する。重イオンビームプローブは2領域同時観測が可能な装置を立上げ、その較正を兼ねた観測をECHで維持するプラズマので実施する。PANTA装置においては、4Dトモグラフィー による磁場方向の不均一性と磁場に垂直な方向の断面計測内に見られる乱流や構造の非対称性が引き起こす乱流輸送に対する影響を追求してゆく。また、PLATOでのトモグラフィー 観測に役立つ画像解析法の開発にも引き続き努める。
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