研究課題
平成29年度、まず本研究を実施する上で欠くことができない加速器施設の課題採択委員会の承認と特別の支持を得た事は重要な一歩である。RIビームファクトリのGARIS, KISS, BigRIPS+SLOWRIの4ヶ所の施設に高周波カーペットガスセルとMRTOF質量分光器を設置して網羅的質量測定を進める建設計画と、GARISおよびKISSにおける3件の具体的質量測定実験計画が承認された。なかでも本計画の旗艦実験であるニホニウム同位体の質量測定計画はSグレードで特別の優先度を伴う45日の加速器運転日数が認められた。また、準備段階の研究(科研費基盤研究(S))の期間に超ウラン元素などの質量測定実験したデータを解析して4篇の重要な論文を出版して本研究の確実な道標を示し、1件のプレスリリースを出し本研究の意義についてのアウトリーチに努めた。具体的な実験装置の準備としては、以下の項目を実行した。1)RILAC施設にあったGARIS-IIがリングサイクロトロン施設に移動したのに合わせて、ガスセル及びMRTOF装置の移設を行い、排気系を増強した。また新GARIS-IIの焦点面検出器を増強した。2)KISS装置におけるビーム冷却イオントラップ装置とMRTOF質量分光器を整備し、オフラインでの試験を開始すると同時に、KISS装置のRIビーム生成強度を上げるための新しい励起レーザーを導入した。3)BigRIPS+SLOWRIにおいて必要な高エネルギーRIビームの高速高効率減速・冷却・捕集するための新しい構造の雨樋式高周波カーペットの開発を開始した。4)崩壊研究のための新しいデータ収集系の準備を開始した。これらの開発の基、次年度以降に複数の質量分光器を平行に稼働させて網羅的測定を実行する予定である。
2: おおむね順調に進展している
加速器施設の新超重元素探索実験計画のための加速器運転の制限から、想定した時期より早く装置の移転が必要になったり、マシンタイムの割当が当面無かった事ため、実験開始時期に遅延が生じてはいるが、全体計画の進行上は想定内の事であり、現段階では短期的な結果よりも個々の装置の開発に注力して進めている状況である。計画全体について加速器施設の課題採択委員会から強力な支持を得たこと、準備段階の研究の実験結果の解析を進めて論文を出版し業界から高い評価と注目を得られていることも、計画の成功を裏付ける重要なエビデンスである。
当初の計画通りに4ヶ所のRIビーム施設に並行して質量測定が進められるように装置を整備し、着実に網羅的測定が実施できるように準備を進める予定である。旗艦実験であるニホニウム同位体の質量測定は、加速器施設の施設missionとされる新元素探索実験との両立に制限があり、実施時期に多少の遅れが出ることは甘受しなければならない。一方、その実験に必要なCa48ビームのための試料が高騰して入手が難しくなっており、別途予算措置を各方面にあたって解決したい。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 10件、 招待講演 9件)
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