研究課題/領域番号 |
17H06091
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
茶谷 直人 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30171953)
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研究期間 (年度) |
2017-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 分子活性化 / 炭素-水素結合活性化 / 炭素-酸素結合活性化 / 炭素-フッ素結合活性化 / 炭素-リン結合活性化 |
研究実績の概要 |
【炭素-水素結合活性化】ロジウム触媒系では、マレイミドやノルボルネンもアルケンとして反応することがわかった。特に、ノルボルネンではエンド選択的に進行する初めての効率的な例を発見した。アルケンの代わりにアルキンも用いることができる。8-アミノキノリン二座配向基だけでなく、ピコリンアミドもナフタレン環の8位の炭素-水素結合活性化に配向基として働くことを見出した。コバルトを触媒とするヨウ素化、アシロキシ化も達成することができた。今までニッケルを触媒とする炭素-水素結合活性化反応を報告してきたが、いずれも8-アミノキノリンのような特殊な二座配向基が必要であった。しかし、ニッケルを触媒とする芳香族アミドとアセチレンとの酸化的環化反応が、二座配向基がなくても進行することを見出した。成功の鍵は、触媒量の強塩基の利用である。この系は、他の不活性結合の活性化にも有効であることがわかった。また、ルテニウムを触媒とするトリアゾール類の炭素-水素結合カルボニル化反応も見出すことができた 【炭素-酸素結合活性化】理論科学者と共同研究によりニッケルを触媒とするアニソール類とアリールボロン酸エステルの鈴木-宮浦型カップリング反応のDFT計算を行った。さらに、ニッケルを触媒とする芳香族カーバメート類の炭素-酸素結合の活性化を経る還元反応も見出した。水素源は、イソプロパノールである。さらに、プロパルギルアルコールを用いるとアルキニル化が進行する。ジイソプロピルアミノボランの特異な性質を利用した還元反応の開発にも成功した。ニッケルを触媒とするエステル類の外部還元剤を用いない還元反応を開発した。 【炭素-リン結合活性化】パラジウムを触媒とし、二つの炭素-リン結合の活性化を経るホスホール類の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までニッケルを触媒とする様々な炭素-水素結合活性化反応を報告してきた。われわれだけでなく、他の多くの研究者もわれわれが開発した触媒系を利用して、多くの反応を開発してきた。しかし、いずれも8-アミノキノリンのような特殊な二座配向基が必要であった。しかし、本年度は、二座配向基を用いないニッケルを触媒とする炭素-水素結合活性化反応の開発に成功した。成功の鍵は、強塩基を用いたことで、ニッケルアート錯体が生成し、これが触媒活性種として働いていることが、理論計算によって確かめられた。この系は、他の不活性な結合の活性化にも有効であることがわかり、現在、その展開をはかっている。今のところ、炭素-水素結合とアセチレンとの反応しか開発に成功していないが、これを手掛かりに、さらに新しい反応系の開発が期待される。さらに、ニッケルを触媒とする炭素-水素結合活性化反応および炭素-酸素結合活性化反応の開発途上で、予想外の反応を見出すことができた。まだ、予備的な研究段階ではあるが、今後の進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
研究は、順調に進行しているので、今後の研究計画に特に大きな変更点はない。新しい発見もいくつか見出しているので、このまま研究計画を遂行していく。研究が順調に進んでいるので、今後、飽和炭素-水素結合活性化および不斉炭素-水素結合活性化反応への展開にも前倒しで取り組む余裕がでてきた。また、いくつかの新規触媒反応を開発したので、理論科学者との共同研究あるいは、自分たちでも理論計算を行い発見した反応機構の解明を行いたい。それによって、さらに新しい触媒反応開発につながることが期待される。 さらに、今まで使われてこなかった新しい配向基を設計し、それらを用いた高い触媒活性を有する新規分子触媒を設計し、今までにない新しい触媒反応の開発を進めていきたい。
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