研究課題
1)睡眠覚醒制御に関与する細胞内シグナル伝達系を明らかにするために、野生型および変異型SIK3脳と、自然睡眠脳および断眠脳を用いた、プロテオミクスおよびリン酸化プロテオミクス解析を行った。その結果、睡眠必要量の増大に相関して、AMPK等のキナーゼによるリン酸化部位のリン酸化が亢進していることを示した。睡眠必要量の増大に明確にリンクする蛋白質群を同定したが、それらの多くはシナプスの機能と構造に関与するものであった。さらに、それらの分子の多くは、野生型SIK3よりも変異型SIK3により強く結合した。この結果は、現時点で最も網羅的で精緻な睡眠覚醒に関するプロテオミクス/リン酸化プロテオミクスデータであり、睡眠の機能や“眠気”の分子的実態を明らかにする上で貴重な情報となる。2) Sik3遺伝子改変マウスを用いた睡眠量を規定する神経細胞集団を同定するため、Sik3遺伝子エクソン13をloxPで挟んだSik3 (Ex13 flox)遺伝子改変マウスを、各種Creドライバーマウスと交配させ、睡眠覚醒行動を検討しており、順調にデータ数を増やしている。3)ランダム点突然変異マウスを用いた、脳波筋電図に基づく睡眠異常マウスのスクリーニングを行った。最大で週に80匹の突然変異マウスを検討している。複数の睡眠異常を示す個体が得られており、睡眠異常の遺伝性を検討している。4) Nalcn遺伝子改変マウスを用いたレム睡眠制御神経回路を同定するために、Cre蛋白依存的に野生型エクソンと変異型エクソンがスイッチするNalcn遺伝子改変FLEXマウスを用いて各種Creドライバーマウスとの交配を進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
概ね計画通りに進展しているが、特に睡眠覚醒に関連したリン酸化プロテオミクス研究は大きく進展し、その成果をNature誌に発表することができた(現在in press)。
1) 睡眠覚醒制御に関与する細胞内シグナル伝達系については、より詳細な検討を進めていき、SIK3を介した睡眠量を規定するシグナル系の解明を目指す。2) Sik3遺伝子改変マウスを用いた睡眠量を規定する神経細胞集団を同定のため、Sik3(Ex13 flox)マウスと交配させる各種Creドライバーマウスの種類を増やす。3) ランダム点突然変異マウスを用いた睡眠異常スクリーニングは、営為継続していく。4) Nalcn FLEXマウスと各種Creドライバーマウスとの交配と睡眠覚醒の検討を継続する。以上を含めて、SIK3やNalcnを中心に睡眠のフォワード・ジェネティクス研究を推進していく。
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