研究課題/領域番号 |
17H06095
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柳沢 正史 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授 (20202369)
|
研究分担者 |
船戸 弘正 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授(WPI-IIIS) (90363118)
Liu Qinghua 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授 (90723792)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-25 – 2022-03-31
|
キーワード | 睡眠覚醒 / 脳神経 / 遺伝子改変マウス / ゲノム編集 / 細胞内シグナル伝達系 |
研究実績の概要 |
睡眠は動物に普遍的に認められる行動であり、その不調は心身の疾患リスクを高める。しかし、睡眠覚醒行動を制御する神経科学的メカニズムは不明である。研究代表者らは哺乳類を用いた睡眠のフォワード・ジェネティックス研究により、新規睡眠制御分子としてリン酸化酵素SIK3およびイオンチャネルNALCNを同定した。本研究は、睡眠のフォワード・ジェネティクス研究により新規睡眠制御分子を同定するとともに、SIK3およびNALCNによる睡眠覚醒制御機構解明を目指している。 脳波筋電図にもとづくランダム点突然変異マウスの睡眠異常スクリーニングのため、変異導入から連鎖解析までの工程を筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構内で行える体制を確立した。計画通りに、睡眠異常スクリーニングを継続しており、睡眠異常を示すマウスは複数得ている。これらの次世代において遺伝性確認が確認された家系も複数存在する。 眠気の分子機構解明のため、野生型および変異型SIK3脳および、自由睡眠および睡眠遮断群の脳を用いたリン酸化プロテオミクス解析から、眠気の分子インデックスとなるSleep Need Index Phosphoproteins (SNIPPs)を同定し、公表することができた(Wang et al. Nature 2018)。 Sik3遺伝子変異によって睡眠量が大きく増大することを利用して、変異型SIK3マウスの睡眠過多をもたらす神経細胞サブタイプを同定するため、年度当初計画通りに、Sik3遺伝子エクソン13をloxPで挟んだSik3(Ex13 flox)遺伝子改変マウスを、各種Creドライバーマウスと交配させ、睡眠覚醒行動の検討を実施した。変異型NALCN発現によるレム睡眠制御の責任神経細胞集団の同定のため、Nalcn遺伝子改変FLExマウスを用いて各種Creドライバーマウスとの交配を進め、レム睡眠異常の有無を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
睡眠のフォワード・ジェネティクス研究、SIK3による睡眠制御、NALCNによるレム睡眠制御はそれぞれ概ね計画通りに進展している。本年度の大きな実績は、眠気の分子インデックスとなるリン酸化蛋白質変化をNature誌に発表したことであり。国内外から大きな反響を得ている。この研究は、長期間に渡る複数の国、研究室、国籍の異なるPIによる共同研究の成果であり、研究成果そのものの価値だけではなく、国際共同研究や融合的研究の成功例としても意味のある実績であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的には各プロジェクトは計画通りに進行しているので、計画変更せず研究推進していく。 ランダム点突然変異マウスを用いた新規睡眠制御遺伝子の同定は、スクリーニングを継続していくとともに、睡眠異常個体、睡眠異常家系など各段階のものを順次、次のステップに進めていき、遺伝性の睡眠異常をもたらす遺伝子変異を同定する。Sik3遺伝子改変マウスを用いた睡眠量を規定する神経細胞集団の同定は、ロバストな結果を得るため分子種の異なる複数Creラインシリーズを用いた睡眠覚醒行動検討を行っていく。さらに、ウイルスベクターも用いる。野生型および変異型SIK3マウスを用いた睡眠制御の細胞内シグナル伝達系同定に関しては、変異型SIK3脳を用いたプロテオミクスおよびリン酸化プロテオミクス解析結果をさらに発展させるとともに、培養細胞も用いてより直接的なSIK3シグナル伝達系分子の同定に取り組む。Nalcn遺伝子改変マウスを用いたレム睡眠制御神経回路の同定についても、各種Creドライバーマウスとの交配により手堅く着実に正しい結論が導かれるように進めている。ウイルスベクターの局所投与による詳細な検討も並行して行う。
|