研究課題
睡眠は動物に普遍的に認められる行動であり、その不調は心身の疾患リスクを高める。しかし、睡眠覚醒行動を制御する神経科学的メカニズムは不明である。研究代表者らは哺乳類を用いた睡眠のフォワード・ジェネティックス研究により、新規睡眠制御分子としてリン酸化酵素SIK3およびイオンチャネルNALCNを同定した。本研究は、睡眠のフォワード・ジェネティクス研究により新規睡眠制御分子を同定するとともに、SIK3およびNALCNによる睡眠覚醒制御機構解明を目指している。前年度に引き続き脳波筋電図にもとづくランダム点突然変異マウスの睡眠異常スクリーニングを行っている。Drowsyという過眠家系を樹立して、その責任遺伝子変異をカルシウムチャネルCanca1a遺伝子に見出した。Canca1a (Drw)ヘテロ変異マウスは睡眠が増える以外にあきらかな異常を認めないが、ホモ変異マウスは運動および姿勢制御の顕著な異常および低成長を示す。ハプロ不全による睡眠異常を検出することができた。Sik3遺伝子変異を用いた睡眠覚醒行動を変化させる神経集団同定も遺伝子改変マウスおよびアデノ随伴ウイルスを用いて進行している。関連してSIK1およびSIK2のPKAリン酸化部位のアラニン置換により睡眠必要量が増大することも示した。睡眠制御におけるPKA-SIKパスウェイの役割を示したことになる。変異型NALCN発現によるレム睡眠制御の責任神経細胞集団の同定のため、Nalcn遺伝子改変FLExマウスを用いて各種Creドライバーマウスとの交配を進めレム睡眠異常の有無を検討している。NALCN Floxマウスの検討も行っている。
1: 当初の計画以上に進展している
これまで本研究により、SIK3を過眠モデルとして用いることで眠気の分子インデックスとなるリン酸化蛋白質群SNIPPsを同定(Wang et al. Nature 2018)、フォワード・ジェネティクス研究により樹立された過眠家系DrowsyにおけるカルシウムチャネルCacna1a遺伝子変異の同定(Miyoshi et al. PNAS 2019)などの成果を発表した。
各プロジェクトは計画通りに進行しているので、計画変更せず研究推進していく。ランダム点突然変異マウスを用いた新規睡眠制御遺伝子の同定を進めていくとともに、SIK3 Slp変異アリールに対するサプレッサースクリーニングも推進する。Sik3遺伝子改変マウスを用いた睡眠量を規定する神経細胞集団の同定は、さらに回路レベルまたは細胞レベルの展開も進めたい。野生型および変異型SIK3を用いた、個体または細胞のプロテオミクスおよびリン酸化プロテオミクス解析も発展させる。Nalcn遺伝子改変マウスを用いたレム睡眠制御神経回路の同定についても、Creドライバーマウスやアデノ随伴ウイルスを用いて進める。
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すべて 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 13件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 16件) 学会発表 (45件) (うち国際学会 28件、 招待講演 20件) 図書 (1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
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