研究実績の概要 |
本研究では、ヒト生殖細胞発生過程の試験管内再構成を発展させ、ヒト生殖細胞の発生機構とその異常に関する特段の知見を得る基盤を形成する。具体的には、マウス・カニクイザルをモデル生物とし、またヒト細胞を用い、1) 規定条件に基づくマウス始原生殖細胞様細胞 (primordial germ cell-like cells: PGCLCs) の雌雄生殖細胞への分化制御法の開発、2) カニクイザルPGCLCsのエピゲノムリプログラミング誘導法・雌雄生殖細胞への分化制御法の開発、3) ヒトPGCLCsのエピゲノムリプログラミング誘導法・雌雄生殖細胞への分化制御法の開発、4) ヒトiPSCsからのヒト生殖巣体細胞系譜の誘導法の開発、の4つの研究を統合的に推進する。本研究により、マウス・サル・ヒトにおいて、生殖細胞発生過程に伴う顕著な現象(エピゲノムリプログラミングと雌雄分化)が試験管内で再現可能となると期待される。 昨年度に引き続き、1) では、規定条件に基づく卵母細胞成長法の開発、雄性分化条件の検討、再構成精巣法の改善(論文revise中)、2) では、カニクイザル胚におけるX染色体動態の解明(論文revise中)、カニクイザルPGCLCsの卵母細胞への分化法の開発(論文作成中)、カニクイザル卵原細胞を原始卵胞に分化させる方法論の開発(論文作成中)、3) では、多数の雌雄ヒトiPSCsのエピゲノムプロファイルの検証(論文revise中)、ヒトPGCLCsを誘導する転写制御機構の解明(LSM, 2021)、ヒトPGCLCs増殖法の開発(EMBO J, 2020)、ヒト卵原細胞を原始卵胞に分化させる方法論の開発、4) では、マウス・カニクイザル生殖巣体細胞分化過程の解明(Cell Rep., in press)、カニクイザル・ヒト多能性幹細胞を用いた生殖巣体細胞の誘導法の検討、を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、上述したように、1) 規定条件に基づくマウスPGCLCsの雌雄生殖細胞への分化制御法の開発、2) カニクイザルPGCLCsのエピゲノムリプログラミング誘導法・雌雄生殖細胞への分化制御法の開発、3) ヒトPGCLCsのエピゲノムリプログラミング誘導法・雌雄生殖細胞への分化制御法の開発、4) ヒトiPSCsからのヒト生殖巣体細胞系譜の誘導法の開発、の4つの研究を統合的に推進中である。 昨年からの主な成果として、1) に関しては、マウス卵母細胞分化の決定因子を同定(Science, 2020)、また、再構成精巣法の改善に成功した(論文revise中)。2) に関しては、カニクイザル胚におけるX染色体動態を解明し(論文revise中)、カニクイザルESCs安定培養法とPGCLCs誘導法(BOR, 2020)、PGCLCsの卵母細胞への分化法の開発(論文準備中)、カニクイザル卵原細胞を原始卵胞に分化させる方法論の開発(論文準備中)、を推進した。3) に関しては、多数の雌雄ヒトiPSCsのエピゲノムプロファイルの検証(論文revise中)、ヒトPGCLCsを誘導する転写制御機構の解明(LSM, 2021)、ヒトPGCLCs増殖法を開発し(EMBO J, 2020)、ヒトPGCLCsを初期卵母細胞に分化させる方法論を確立(Science, 2018; Nat. Protoc., 2020)、ヒト卵原細胞を原始卵胞に誘導する研究を行った。4) に関しては、マウス・カニクイザル生殖巣体細胞分化過程の解明(Cell Rep., in press)、カニクイザル・ヒト多能性幹細胞を用いた生殖巣体細胞の誘導法の検討、を推進した。以上から本研究の目標達成に向け着実に研究を推進出来ていると評価できる。 なお、令和2年度研究進捗評価において、A+の評価を得た。
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