研究課題/領域番号 |
17H06104
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿部 彩子 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (30272537)
|
研究分担者 |
大河内 直彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, 分野長 (00281832)
吉森 正和 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (20466874)
齋藤 冬樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 統合的気候変動予測研究分野, 技術研究員 (60396942)
Greve Ralf 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (90374644)
川村 賢二 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (90431478)
藤田 耕史 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80303593)
|
研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
|
キーワード | 環境変動 / 古環境モデル |
研究実績の概要 |
(1) 過去80万年や150万年のモデリングに拡張した北半球氷床の長期計算を継続し、氷期サイクルが4万年周期から10万年周期へ遷移した原因に迫る為の様々な感度実験を実施した。過去150-120万年前の部分について、論文執筆を進めた。(2) 退氷期における氷床-海洋-大気の相互作用について、MIROCを用いた複数の退氷期における連続的非定常実験を継続実行した。特に最終退氷期における急激な海洋循環の停止と北半球寒冷化の再現のために行った北大西洋へ流入する氷床融解水量を様々に変える実験は解析を進め、急激な気候変化について論文を執筆投稿し、出版した(Obase and Abe-Ouchi, 2019, GRL、広報解説プレスリリースあり)。(3) 平均気候の決定条件である二酸化炭素濃度や軌道要素を変化させる感度実験を継続し、振動の発生や維持の条件を詳細に調べ、最終氷期の気候システムの変動の理解を進めた。さらに、深層循環やグリーンランドの気温、中低緯度の降水量について振動の2つのモードを解析し、データとの整合性を調べた。また、これまでの二酸化炭素濃度、軌道要素、淡水流入の変化に対する感度実験を進め50以上の実験から、海洋深層循環の外的要因に対する応答の性質を、その多重構造の観点でまとめ論文執筆に着手した。(4) また急激な気候変化における海氷の大気―海洋相互作用における重要性を示した論文を執筆投稿した。高度化したモデル・データ比較に向けて海洋炭素循環モデルによる降水の水同位体比や海水中の炭素同位体の計算を試行した。(5) 150万年間の氷床コア掘削のための基盤地形調査と温度や年代に関する氷床モデリング行ない古い氷の存在可能性について詳細に調べた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに概ね進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 気候モデルの結果と酸素同位体比やメタンなどのアイスコアや古海洋データによる気候復元との比較やモデルの詳細な解析を進め、現実に起きた急激な気候変化イベント(ダンスガードオシュガーイベント)の要因を解釈する。(2)氷期の中盤は気候変動の周期が短いという問題に着目して、北大西洋深層循環の振動の維持や遷移メカニズムとその周期を決めている要因を調べるための大気海洋結合モデル感度実験を進め結果を論文としてまとめていく。(3)氷期サイクル形成理解の上でポイントとなる, 離心率が小さく氷期から間氷期の振幅が大きい時代(40万年前)など多数の退氷期と間氷期の氷床モデル実験を行う.氷床再現に対する海洋循環による熱輸送変化の影響を考慮するため, 大気海洋結合モデルによる実験も行う. (4)より現実な北半球氷床モデルについて検討し、急激な気候変動に関わる氷床と海洋の関係を分析する。数値実験結果と古環境データとの整合性を総合的に調べつつ、氷床―海洋―大気相互作用を含む気候システムの特性を検討する。(5)急激な気候や海洋変化が氷床変動に及ぼす影響を考慮に入れた上で、過去150万年の氷期サイクル実験を準備、実行する。4万年から10万年に周期が変化した要因を総合的に分析する。(6)より古い年代のアイスコアやより高解像度の古海洋データ取得や解釈のための古環境モデリングの高度化や活用の方策も探る。
|