研究課題/領域番号 |
17H06105
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉田 尚弘 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (60174942)
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研究分担者 |
南部 伸孝 上智大学, 理工学部, 教授 (00249955)
上野 雄一郎 東京工業大学, 理学院, 教授 (90422542)
豊田 栄 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (30313357)
山田 桂太 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (70323780)
服部 祥平 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (70700152)
中川 麻悠子 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (20647664)
ジルベルト アレキシー 東京工業大学, 理学院, 特任助教 (20726955)
フォリエル ジュリアン 東京工業大学, 地球生命研究所, 特任助教 (60747161)
ダニエラチェ セバスチィアン 上智大学, 理工学部, 准教授 (00595754)
阿部 理 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (00293720)
松木 篤 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (90505728)
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研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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キーワード | アイソトポログ / アイソトポマー / 地球環境 / 物質循環 / 環境診断 |
研究実績の概要 |
環境物質の同位体置換分子種(アイソトポログ)の自然存在度を計測して、地質、生物、人為の各プロセスを精密に解析し、その相互作用で決まる地球表層環境を統一的に診断する方法創出の研究を開始した。アイソトポログには、分子内同位体分布(PSIA)、非質量依存同位体分別(MIF)、多重同位体置換(Clumped)の3つの置換モードがある。これら全ての先端計測解析が唯一可能な本グループは、その強みを生かし、要素ごと、および3 要素を融合した異次元のアイソトポログ計測法を構築し、世界標準とし、各プロセスとその相互作用を解析し、地球表層環境診断を行っている。 計測法開発および国際標準化については、PSIA、C-Hおよび36O2-Clumped(18O18O)計測法の開発、炭酸塩-Clumped(13C18O)温度依存曲線の高精度化、MIF、国際標準化を計画に沿って進めた。地質、生物、人為の各プロセスへの応用については、岩石圏から大気海洋へ供給されるメタン・炭化水素、大規模火山噴火後の大気化学過程と気候変動、環境変化に伴う炭素固定系変化の解明、環境変化に伴うVOC代謝変化の解明、地球温暖化影響に関する試料採取および模擬実験系の構築、人為起源汚染物質に関する試料採取と分析を進めた。 実施計画の中で、特に計測法開発および国際標準化について大きな進展があり、既にいくつかの低分子量揮発性有機化合物と長鎖炭化水素および脂肪酸の熱分解法による炭素の位置別同位体分布の計測法を確立しつつある。この成果を踏まえて平成30年度に予定していた高度な同位体分子計測法開発を前倒して、高分解能質量分析計を賃貸により導入し、他の計測法とのクロスチェックと国際標準化のための標準物質の作成を開始した。これにより、各プロセスへの応用が平成30年度において早期に進めることができ、研究のさらなる加速が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
下記の10.研究発表に記すように、いずれも科学的に高く評価されている科学誌に34編の原著論文を公表した。2018年もまだ最初の四半期ほどのところ、16編の論文公表を行っている。学会発表は79件、うち招待講演5件、国際会議発表31件を数える。 6.研究実績の概要に前述したように、計測法開発および国際標準化、地質・生物・人為の各プロセスへの応用については、ほぼ計画に沿って順調に進められている。さらに、実施計画の計測法開発と国際標準化については大きな進展があり、炭素の位置別同位体分布の計測法を確立しつつある。このため平成30年度に予定していた、より高度な同位体分子計測法開発を前倒して、高分解能質量分析計を賃貸により導入した。これによって早期に他の計測法とのクロスチェックと標準物質の作成が実施できるため、より詳細な環境診断が可能となる。本研究目的の一つである地質・生物・人為プロセスへの応用による解明がさらに加速すると期待される。 また、平成29年度に予想以上に研究が進捗したため、12に示したように、2018年3月にInternational Symposium on Isotopomersを米国ルイジアナ州立大学において主宰し、本研究計画の成果として多くの論文発表を行い、世界から集まった一線の研究者と情報交換を活発に行った。2020年には同国際会議を日本に誘致し、当研究グループが中心となって開催することとなった。2020年は本研究計画のちょうど中間点に当たり、日本発の情報発信を行うとともに、より一層の国際共同研究の発展を加速することが可能となった。また、これらの相乗効果でもあるが、13.に記したように6か国15研究機関との国際共同研究の推進も、本計画が国際的に評価されていることの表れと言える。
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今後の研究の推進方策 |
下記に示すように(A)同位体トレーサーの計測法開発および国際標準化を行い、(B)それらを速やかに、さまざまな環境試料に適用して各プロセスを解明し、その相互作用を統一的に解析する診断法として提示する。(A)の高度化とともに、(B)を加速的に推進する。 (A) 計測法開発と国際標準化;PSIA、Clumped、MIF の新たな同位体分子計測法開発を本年度も継続して行う。計測法および作成した標準物質について、国際機関でのオーソライズを進める。 (B) 各プロセスへの応用;B-1) 地質プロセス:大気メタン、蛇紋岩熱水のメタン、プロパン、および熱分解起源炭化水素についてC-H-Clumped 計測・PSIA計測を実施する。熱水実験等の無機生成炭化水素および熱分解実験による炭化水素のC-H 二重置換度・PSIA計測から、地質温度計の構築および生物・非生物プロセスの区別を行い、地圏から大気海洋への水素・メタン・炭化水素供給過程の解明に取り組む。同位体を考慮して構築したモデルを硫黄MIFに展開する。 B-2) 生物プロセス:平成29年度に立ち上げた培養系とVOC計測システムを用いて、生物が放出するVOC の同位体特徴と代謝変化、放出量変化との関係の定量化に取り組む。RubisCO の理論モデルの構築を行い、結晶構造から座標を読み取りモデル用の座標を作る。 B-3)人為プロセス:国際標準化したN2O のPSIA 計測を適用して経年変動や季節変動を解析する。海洋酸性化を模擬した微生物の培養実験を行い、生成するN2O のPSIA計測を行うことにより、酸性化に対するこれらの生成過程の質的・量的変化の検証に取り組む。石川県珠洲市でのエアロゾル採取に加えて中国における試料採取・観測の準備を開始し、東アジア域で進行する光化学オキシダント・大気エアロゾル生成の関連解明に取り組む。
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