研究課題
当研究プロジェクトでは、Glut1結合抗体へのヘテロ核酸をコンジュゲートする。津本グループではそのための抗体クローンの取得を行う。これまでに、Glut1の立体構造を基に設計した細胞外領域由来のペプチドを用いたアルパカ免疫および合成ライブラリからの選別により複数クローンの抗体を取得したが、それら抗体については細胞上での結合活性が確認できなかった。計算的手法を用いてその要因について精査したところ、ペプチドの遊離状態での構造とGlut1タンパク質内での構造の違いに起因することが示唆された。また、上記アルパカへの免疫と並行してラット/マウスへのDNA免疫およびウサギへの抗原免疫も実施しており、細胞株を用いたセレクションを進めている。さらに、Glut1と同じファミリーに属するGlut4についても同様に抗体取得を試みており、現在までにウサギ免疫によって細胞上での抗原結合活性を有する抗体が産生されていることが確認されており、現在ファージディスプレイ法による抗体の選別・取得を行っている。Glut1を介した内在化のメカニズム解析のため、電子顕微鏡によるGlut1の局在解析を確立した。また神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対して、新たな配列を細胞でスクリーングした。またPSを除く、修飾核酸を除くなどしてその効果を検討した。従来よりも遺伝子抑制効果の高い配列が取得できた。新規にヒトSOD1変異を導入したマウスを当科に導入繁殖させた。そのマウスを用いて新たに同定した新規配列のヘテロ核酸を複数回投与して、遺伝子抑制効果およびマウスの表現型を検討した。同配列では有効性を確認し、更に生化学的副作用は見られなかった。
2: おおむね順調に進展している
アルパカ免疫からペプチドを用いた選別によっては単ドメイン抗体を取得できていないが、計算的手法を用いてその要因について精査することにより、タンパク質内と遊離状態のペプチド構造に起因することが明らかとなり、今後の抗体取得の戦略がより明確になった。また、各種動物への免疫からの抗体取得を進めており、細胞株を用いたセレクションによって抗体取得の目処が立ちつつある。さらに、Glut1のみならずGlut4についても抗体取得を行っており、こちらについても細胞上での抗原結合活性を示す抗体の産生が確認されており、抗体取得の目処が立ちつつある。加えて、各種動物由来の抗体について組み換えタンパク質としての調製系の構築が完了しており、有望な抗体クローンが得られ次第、ヘテロ核酸をコンジュゲートする抗体の調製を速やかに行うことができる状況となっている。Glut1の局在を電子顕微鏡で可視化できる系を構築し、神経変性疾患であるALSに対してより強い遺伝子抑制効果のある配列を取得した。
昨年度までの研究により抗原ペプチドの局所構造が抗体のペプチドとタンパク質に対する交差反応性に重要な要因であることが明らかとなったため、標的とするエピトープ領域を、構造を模倣するように足場タンパク質に移植した融合タンパク質を設計し、その融合タンパク質を用いた免疫による抗体取得を行う。また、Glut1、Glut4の双方について引き続き各種実験動物による免疫・細胞株を用いた抗体のセレクションを行う。各種選択法によって得られた抗体について、順次抗原結合活性や細胞内への取り込みについて評価を行い、優れた活性を持つ抗体クローンについては横田グループと連携しながらモデルマウスを活用してのin vivoでの体内動態について検証を行うとともに、ヘテロ核酸とのコンジュゲート法やフラグメント化をはじめとする抗体工学的手法による抗体改変についても検討に着手する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (8件)
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