研究課題/領域番号 |
17H06109
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
横田 隆徳 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90231688)
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研究分担者 |
津本 浩平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90271866)
永田 哲也 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, プロジェクト准教授 (50362976)
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研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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キーワード | ヘテロ核酸 / Glucose transporter / Glut 1/4 / リサイクリング / 抗体工学 |
研究実績の概要 |
Glut1結合抗体クローンの取得を行っている。アルパカおよびウサギ、マウスを用いた免疫を行い、適宜ファージディスプレイ法を組み合わせながら抗体選択を行うことにより、各種抗Glut1抗体を取得してきた。Glut1を一過性発現させた哺乳細胞上において抗原に結合性を示す抗体クローンの取得に成功している。しかしながらマウスを用いたin vivoの実験において脳内移行性を確認するには至っていない。そこで、認識するエピトープを限定するため、Glut1の複数種の部分断片をそれぞれキャリアータンパク質にコンジュゲートさせた融合タンパク質を活用した抗体選択を行っている。さらに、Glut1と同じファミリーに属するGlut4についても同様にペプチドを用いたウサギ免疫およびファージディスプレイ法を活用した抗体取得を試みている。現在までにGlut4に関してはペプチドに対する結合クローンをウサギに免疫することで複数取得しており、モノクローナルとした各抗体クローンを用いて細胞免疫染色を行い、細胞上での抗原結合活性ならびに細胞内移行活性について評価している。また、標的ペプチドとの相互作用について、物理化学的手法を用いた解析を行うことにより、結合親和性および相互作用の熱力学的パラメータの算出に成功している。 また脂質リガンドでも同様にFastingや血糖コントロールで同様に脳内への取り込みが上昇するか併せて検討したが明らかな効果の増強及び低下は見られなかった。加えてGlut1を介した内在化のメカニズム解析のため、電子顕微鏡によるGlut1の局在解析を確立した。脳血管内皮細胞の7断面でのGLUT1シグナルの局在を解析した。今後は血糖条件を変化させることによるGLUT1シグナルの局在変化について、電子顕微鏡レベルで解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述したように各種免疫法によって抗Glut1/4抗体の取得を行ってきた。当初、Glut1の細胞外領域に相当するペプチド断片を用いた免疫によって抗Glut1抗体の取得を試みたものの、ペプチド断片は認識するものの細胞上においてGlut1タンパク質を認識しない抗体が得られた。そこで、免疫手法を検討することにより、細胞上においてGlut1タンパク質を認識する抗体の取得に成功した。しかしながら、得られた抗体の組み換えタンパク質を調製し、マウスを用いて脳移行性を検証したところ、有意な脳移行性が確認できなかった。その要因として、抗体が認識するエピトープや抗原に対する親和性が適切でないということが考えられるため、認識するエピトープを限定するためにGlut1の配列を断片化し、局所的な立体構造を維持するように設計した融合タンパク質を活用しながら更なる抗体取得を行っている。今後、得られた抗体の認識エピトープや抗原に対する親和性について定量的に解析し、Glut1を介した細胞内外移行性や脳移行性と対比的に検証することにより、抗体による認識エピトープ依存的な膜タンパク質の動態解析・機能制御に関する分子レベルでの理解が可能となると考えている。今後、取得した抗体にヘテロ核酸を結合させて、脳内移行を観察する。また神経変性疾患に対する核酸配列は決定しており、電顕によるGlutの挙動の観察方法は順調に確立できている。
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今後の研究の推進方策 |
上述した通り、細胞上でGlut1を認識する抗体の取得には成功したものの、現時点でマウス実験によって脳内移行性を確認するに至っていない。そのため、当初の実験計画に加え、標的Glut1に対してより広範な標的部位をエピトープとして認識する抗体の取得を試みる。当初の予定通りその上でヘテロ核酸に結合させて、脳内移行性を検討する予定である。 加えてGlut1脳内移行には投与前の絶食の処置が必要となり、実際の医療では患者さんに負担がかかることが考えられる。そこで並行して食事の影響を受けにくいリガンドの開発も検討する。標的として考えているのはLDL-R系のレセプターを標的として新たなリガンドを探索する。
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