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2017 年度 実績報告書

トランスポゾン侵略から生殖ゲノムをまもるpiRNA作動原理の統合的理解

研究課題

研究課題/領域番号 17H06111
研究機関東京大学

研究代表者

塩見 美喜子  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (20322745)

研究期間 (年度) 2017-05-31 – 2022-03-31
キーワードPIWI / piRNA / トランスポゾン / RNAサイレンシング / ショウジョウバエ
研究実績の概要

トランスポゾンの利己的な転移活性による生殖ゲノムの損傷は種の保存を脅かす。よって有性生殖を伴う動物はpiRNAを中核因子とするRNAサイレンシング機構を自己防衛手段として獲得したと考えられる。しかし、その動作原理は未だ不明である。そこで本研究では、piRNAの動作原理を明らかにすることを目的とした。先行研究から、カイコpiRNAの3’末端形成には、3’-5’エキソヌクレアーゼTrimが関与すること、またミトコンドリア局在型piRNA生合成因子Papiの欠失によってpiRNAの3’末端は数塩基長くなることが示された。しかし、ショウジョウバエpiRNA生合成因子として知られるZucエンドヌクレアーゼとNbr3’-5’エキソヌクレアーゼのpiRNA生合成機構における必要性は不明であった。我々は、カイコ卵巣由来生殖細胞株BmN4を用いた研究を行い、カイコpiRNAの3’末端形成にはZucが必要であること、PapiにPIWIが結合した後にPIWIにpiRNA中間体が結合すること、piRNA前駆体からの中間体の切り出しはPIWIのスライサー活性依存的に起こることを見出した。これらの結果は、piRNA生成機構におけるZucの必要性のみならず、本機構の分子階層性を物語る。piRNA生合成がエキソヌクレアーゼに依存的でないことからも、カイコのpiRNA生合成機構は、ショウジョウバエの機構よりも単純であることが判明した。これらの成果を論文にまとめ、Nature誌に報告した。また、核に局在するpiRNAがどのようにトランスポゾンを転写レベルで抑制するかに関して実験を進めた。BAP複合体とPiwi複合体がトランスポゾン座位において結合することによってpiRNA生合成因子として知られるMaelがBAP複合体の活性を抑制することがわかった。現在、この成果は論文としてまとめつつある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

piRNA生合成機構に関して研究成果をNatureに投稿、受理された。その他の研究計画も期待通りに進展しており、そのいくつかに関しては論文執筆中である。(I) 核に局在するpiRNAがどのようにトランスポゾンを転写レベルで抑制するかに関して実験を進めた。BAP複合体とPiwi複合体がトランスポゾン座位において結合することによってpiRNA生合成因子として知られるMaelがBAP複合体の活性を抑制することがわかった。現在、この成果は論文にまとめつつある。(II) piRNA生合成因子であるYbに関して解析を進めた。YbのN末端にあるHel-Cドメインを介してYbは自身と会合すること、C末端にあるTudドメインを介して、Yb body因子と結合することがわかった。Ybは、3つの機能性ドメインを持っているが、これらがお互いにコーディネートすることによってpiRNA生合成因子として機能していることが判明した。現在、この成果は論文にまとめつつある。(III) piRNA生合成因子であるGaszに関して解析を進めた。Gaszはミトコンドリアに局在するたんぱく質であるが、そのpiRNA生合成機構における機能は不明であった。最近の研究から、GaszはArmiと相互作用することによってpiRNA中間体をZucchiniエンドヌクレアーゼ近傍に引き寄せる因子であることが判明した。現在、この成果は論文にまとめつつある。(IV) piRNA生合成因子であるArmitageに関して解析を進めた。これまでYbがpiRNA生合成機構において最も上流に位置する因子であるとされていたが、我々の解析によってYbはpiRNA前駆体を選択する因子であり、YbがなくてもpiRNA生合成は機能すること、その機能にはArmitageが不可欠であることがわかった。現在、この成果は論文にまとめつつある。

今後の研究の推進方策

研究計画に沿って、piRNA研究を進める。特に、8に示したように、複数のサブテーマに関して論文執筆を進めており、これに尽力を尽くす。同時に、piRNA生合成因子として知られる細胞質局在型Maelの解析、Yb bodyの単離精製及びその構成因子の同定、Spindle-E及びQinのpiRNA生合成機構における機能解析、に焦点を当てて実験を進める。

  • 研究成果

    (24件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 5件、 招待講演 7件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Hierarchical roles of mitochondrial Papi and Zucchini in Bombyx germline piRNA biogenesis2018

    • 著者名/発表者名
      Nishida Kazumichi M.、Sakakibara Kazuhiro、Iwasaki Yuka W.、Yamada Hiromi、Murakami Ryo、Murota Yukiko、Kawamura Takeshi、Kodama Tatsuhiko、Siomi Haruhiko、Siomi Mikiko C.
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 555 ページ: 260~264

    • DOI

      10.1038/nature25788

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Evidence for convergent evolution of SINE-directed Staufen-mediated mRNA decay2018

    • 著者名/発表者名
      Lucas Bronwyn A.、Lavi Eitan、Shiue Lily、Cho Hana、Katzman Sol、Miyoshi Keita、Siomi Mikiko C.、Carmel Liran、Ares Manuel、Maquat Lynne E.
    • 雑誌名

      PNAS

      巻: 115 ページ: 968~973

    • DOI

      10.1073/pnas.1715531115

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] PIWI-Interacting RNA in Drosophila: Biogenesis, Transposon Regulation, and Beyond2017

    • 著者名/発表者名
      Yamashiro Haruna、Siomi Mikiko C.
    • 雑誌名

      CHEMICAL REVIEW

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1021/acs.chemrev.7b00393

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The PIWI-Interacting RNA Molecular Pathway: Insights From Cultured Silkworm Germline Cells2017

    • 著者名/発表者名
      Sakakibara Kazuhiro、Siomi Mikiko C.
    • 雑誌名

      Bioessays

      巻: 40 ページ: 1700068~1700068

    • DOI

      10.1002/bies.201700068

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Use of the CRISPR-Cas9 system for genome editing in cultured Drosophila ovarian somatic cells2017

    • 著者名/発表者名
      Ishizu Hirotsugu、Sumiyoshi Tetsutaro、Siomi Mikiko C.
    • 雑誌名

      ScienceDirect

      巻: 126 ページ: 186~192

    • DOI

      10.1016/j.ymeth.2017.05.021

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] PIWI-Interacting RNA : Its Biogenesis and Functions2018

    • 著者名/発表者名
      Mikiko C.Siomi
    • 学会等名
      2018 Keystone Symposia
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Crystal Structure of Silkworm PIWI-Clade Argonaute Siwi Bound to piRNA2017

    • 著者名/発表者名
      Mikiko C. Siomi
    • 学会等名
      2017 International Conference on Structural Biological Macromolecules
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] piRNA biogenesis in Drosophila and Bombyx germlines2017

    • 著者名/発表者名
      Mikiko C.Siomi
    • 学会等名
      Microsymposium2017
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] The role of Zucchini in 3’ end processing of the piRNA intermediate within the Siwi-pre-piRISC in silkworm germ cells2017

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro Sakakibara, Kazumichi M Nishida, Yuka W Iwasaki, Hiromi Yamada, Ryo Murakami, Haruhiko Siomi, and Mikiko C Siomi
    • 学会等名
      Microsymposium2017
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Molecular mechanism of Piwi-piRNA nuclear localization in ovarian somas2017

    • 著者名/発表者名
      Mikiko C. Siomi
    • 学会等名
      第43回内藤コンファレンス
    • 招待講演
  • [学会発表] piRNAはトランスポゾンの侵略から生殖ゲノムをどのように守るのか2017

    • 著者名/発表者名
      塩見美喜子
    • 学会等名
      千里ライフサイエンス振興財団セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] ショウジョウバエpiRNA生合成因子Ybの機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      平形 樹生、石津 大嗣、塩見 美喜子
    • 学会等名
      第19回日本RNA学会年会
  • [学会発表] Molecular mechanism of piRNA biogenesis2017

    • 著者名/発表者名
      Mikiko C.Siomi
    • 学会等名
      EMBO EMBL Symposia /The Non-Coding Genome
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Requirement of nuclear mono-ubiquitination of Eggless/SETDB1 in piRNA-dependent transposon silencing2017

    • 著者名/発表者名
      Ken Ohsumi, Masaru Ariura, Saori Suzuki, Ryo Onishi, Kaoru Sato, Mikiko C. Siomi
    • 学会等名
      RNAフロンティアミーティング2017
  • [学会発表] piRNA 生合成経路における Vreteno の機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      藤田 あおい ,平形 樹生 ,石津 大嗣 ,巴裕 美子 ,塩見 美喜子
    • 学会等名
      RNAフロンティアミーティング2017
  • [学会発表] piRNAを介したトランスポゾン転写抑制機構の解析2017

    • 著者名/発表者名
      大西 遼、佐藤 薫、塩見 美喜子
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] ショウジョウバエ脳腫瘍抑制遺伝子2017

    • 著者名/発表者名
      山本 瞳、佐藤 薫、塩見 美喜子
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] PAPIリン酸化修飾によるpiRNA成熟化制御機構の解明2017

    • 著者名/発表者名
      山田 紘実、西田 知訓、榊原 和洋、塩見 美喜子
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] ミトコンドリア外膜に局在するpiRNA生合成因子GasZの機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      山城 はるな、石津 大嗣、塩見 美喜子
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] ショウジョウバエ卵巣体細胞におけるpiRNAとendo-siRNAのクロストーク2017

    • 著者名/発表者名
      小松崎 千尋、石津 大嗣、塩見 美喜子
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] piRNA生合成因子BmQinの機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      Yumi Miyata, Kazumichi M. Nishida, Yuka W. Iwasaki, Haruhiko Siomi and Mikiko C. Siomi1
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] primary piRNA生合成におけるRNAヘリカーゼ Armitageの機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      木下 達貴、石津 大嗣、塩見 美喜子
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [図書] ナノバイオ・メディシン2017

    • 著者名/発表者名
      宇理須 恒雄、佐久間 哲史、高田 望、竹中 繁織、小澤 岳昌、吉村 英哲、胡桃坂 仁志、越阪部 晃永、原田 昌彦、束田 裕一、宮成 悠介、塩見 美喜子、大西 遼
    • 総ページ数
      232
    • 出版者
      近代科学社
    • ISBN
      4764950286
  • [備考] 塩見研究室

    • URL

      http://www-siomilab.biochem.s.u-tokyo.ac.jp/index.html

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公開日: 2018-12-17  

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