研究課題
線虫は塩の濃度を学習し行動を変化させる。さらに、塩を経験した際に餌があったか無かったかでその塩濃度へ寄っていくか逃げるかが変化する。本研究では学習による行動変化のしくみを分子、神経回路、行動制御の各レベルで調べ、以下の機構の解明を目指した。(1) 細胞内シグナル伝達と転写制御によるシナプス制御機構の解析、記憶分子の特定、(2) シナプス伝達の反転の機構の解明、(3) 運動回路の同定と回路ダイナミクスの定量化、(4) 感覚運動相互作用の神経機構の解明、(5) 学習による分子の変化とそれによる全神経ダイナミクスの変化の解明、(6) 線虫の「気分」による感覚運動行動の変化の機構その結果、塩や餌により神経伝達が変化する分子神経機構、神経回路における情報の流れ、化学走性の行動機構のそれぞれにおいてこれまでに不明であった問題に解答を与え、総合的な理解を達成した。特に、感覚神経ASERから会在神経AIBへのグルタミン酸によるシナプス伝達の反転の分子・神経機構を明らかにしたことでその全貌が明らかになった。すなわち、過去と現在の塩濃度の差がASERの神経活動の差として捉えられ、それによりシナプスのジアシルグリセロールの量が変化し、プロテインキナーゼC(nPKC/PKC-1)が活性制御され、シナプスタンパク質であるシンタキシンUNC-64をリン酸化する。これによりグルタミン酸の放出量のベースラインが塩濃度の過去現在の差を反映することになる。一方、AIB神経側の興奮性グルタミン酸と抑制性グルタミン酸の間でグルタミン酸への感受性が異なることをin vivoおよびXenopusの発現系を用いて見出した。これにより、ベースラインの違いにより興奮性優位で正の伝達、抑制性優位で負の伝達と切り替わり、結果的に行動の反転に寄与することが明らかとなった。以上の結果を論文発表した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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