研究課題/領域番号 |
17H06116
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
城山 智子 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (60281763)
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研究分担者 |
川崎 昭如 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 特任教授 (00401696)
神田 さやこ 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (00296732)
小川 道大 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (30712567)
小林 篤史 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 助教 (40750435)
宮田 敏之 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (70309516)
高橋 塁 東海大学, 政治経済学部, 教授 (30453707)
太田 淳 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (50634375)
木越 義則 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (00708919)
村上 衛 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (50346053)
濱下 武志 龍谷大学, 公私立大学の部局等, フェロー (90126368)
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研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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キーワード | 近代アジア / 水圏 / モンスーン / 気候 / 空間解析 / 地域史 |
研究実績の概要 |
本研究は、歴史研究者からなる歴史データベース(DB)ユニット(以下DBユニット)と、空間・水文解析の研究者による空間解析ユニット(以下空間ユニット)、それらを統括する統括ユニットが協働して行う。DBユニットによる資料収集と、空間ユニットによる水文解析の歴史研究への応用を含む新たな分析手法の開発を踏まえて【1、資料の収集・分析手法の開発】、①自然環境・現象、②生産・生活、③移動・流通をめぐる各地の水圏に関するDB構築と分析を行い【2、DB構築と分析】、自然と社会が交差するアジア地域の内的ダイナミズムに歴史的考察を加えていく。 【2、DB構築と分析】は、個々の水圏の生産・生活に関する2.1「自然災害と社会変動」と、水圏間を結びつける流通・移動に関する2.2「水圏間のつながりと仮想水貿易」の二つのプロジェクトから成る。2.1については、A. 「1931年長江水害研究」 では、空間ユニットによる氾濫期の気候・水文の復元に呼応して、被災のインパクトを、米価変動を通じて分析する作業を進めた。B.「1876-1878年インド旱魃と飢饉」では、 気候歴史DBと水文モデルの応用という手法を展開させ、再現された気候・水圏の下での、死亡率や疾病要因、作物生産に関する空間情報DBから飢饉の分析を行った。2.2については、1918-1920年のエルニーニョによる異常気象の下で、特定の地域における米の不作が、貿易を介してアジア全域での危機へと繋がっていく連鎖から、水圏間の密接な関係に考察を加えた。 統括ユニットは、国際学会(The 3rd World Congress of Environmental History)や国際ワークショップ “Rain, River, and Rice in Modern Burma”(2019年11月)を通じて、中間成果の国際発信と国際ネットワークの拡充を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、モンスーンと季節的降雨という気候と、海や河川からなる水圏という、水をめぐる2つの条件に関係する問題群①「自然環境・現象」、②「生産・生活」、③「移動・流通」に着目し、(1)資料収集とDB構築、(2)空間・水文解析の応用、(3)分析と考察、の三つの作業を通じて、気候・水圏・社会経済の相関関係から、19-20世紀アジア域内の共通性・多様性・関係性に歴史的考察を加えるものである。これまで、それぞれの問題群と作業を密接に関連付けながら、以下のような進展を遂げている。 「自然環境・現象」(問題群①)については、新たなデータソースと手法を組み合わせて、従来明らかではなかった、歴史的なモンスーンの季節サイクル・年次変動とそこでの水圏の態様を再現し分析を加えている。問題群②「生産・生活」に関して進められている「自然災害と社会変動」プロジェクトでは、従来の研究よりもミクロなレベルで、気候・水圏と社会経済の関係をデータに基づいて分析することにより、、新たな社会経済史研究の可能性を拓いている。個々の水圏における生産・生活に検討を加えるだけではなく、問題群③「移動・流通」では、米の生産・流通・消費をつなぐフローに着目し、モンスーン気候を共有する水圏間の関係を明らかにしてきている。 こうした研究の進展については、国際学会や国際ワークショップを通じて成果を発信し、有益なフィードバックを得ることが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
データの解析と気候・気象学研究者との議論を通じて、1876-78年(インド大旱魃)、1931年(長江大洪水)が、深刻な米不足が生じた1918-20年と並んで、エルニーニョの影響下にあった可能性が高いことが明らかになった。これらの3つの期間を本研究が共有する基準年(ベンチイヤー)として設定した。今後は、DBユニット・空間ユニットが協働し、ベンチイヤー前後の平常時に分析を広げることで、降雨の過多・過少が災害として現出するメカニズムを季節のサイクルの中で明らかにし、社会経済の長期的変動にも考察を加える。更に、これまでのデータ構築・分析・考察の成果を踏まえて、時系列と地点間で、制度、産業、統治、技術といった幾つかのパラメータに着目して比較と統合を行い、最終成果としての統合的な地域史の構築を目指す。歴史研究上の知見を、日本語・外国語での出版を通じて発表すると同時に、空間情報DBという研究リソースと空間解析の応用という研究手法についても、ウェブサイトの拡充、国際学会でのパネル報告や国際シンポジウム、内外の関係学術雑誌への投稿を通じて発信を進める。
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