研究課題
テトラキス(ジメチルアミノ)エチレンはエチレンの4つの水素をジメチルアミノ基に置き換えたエナミンの1つであり、フラーレンに対し1電子を与えることで対応するラジカルアニオンを発生させる。一方,TDAEはヘテロ非環状カルベン二量体とみなすことができ、Wanzlick平衡により対応するカルベンを与える。本研究では、TDAEのこれら2つの特性を生かした開口フラーレン誘導体の構造修飾について検討した。フラーレン骨格内部への効率的な小分子の挿入には、開口部構造が重要である。しかし、単にサイズを拡大しても、楕円形開口部の場合、小分子導入の際に大きな歪みを生じる。そこで,開口部を円形に近づけることができれば中程度の環員数でも小分子の挿入が可能になると期待される。そこで、楕円形13員環開口部をもつ開口フラーレンの脱カルボニル化反応について検討した。TDAEおよび水存在下、開口体のo-ジクロロベンゼン溶液を180 °Cにおいて24 h加熱したところ、2種類の生成物が24および5%で得られた。本反応は、トリス(ジメチルアミノ)メタンを用いても同様に反応が進行した。単結晶X線構造解析の結果、これらの開口体は円形に近い14員環開口部をもち、それぞれ32および78%の内包率で水分子が包接されていることが1H NMR測定により明らかとなった。興味深いことに、反応過程で発生した中間体に水分子が挿入された後にこれらが生成したことが理論計算により示唆された。基質適用範囲を拡張するために、開口部拡大反応がわずか数例に限られているC70誘導体を用いた脱カルボニル化反応を行なったところ、類似の反応による生成物がそれぞれ7および62%の収率で得られた。これらのホスト分子は、水二量体などの未だ単離には至っていない小分子クラスターの創出に有望である。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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