研究課題
本研究では、極めて柔らかく脆弱であるために現在の高速AFMでは観察が難しいタンパク質系(例えば、極めて柔らかい膜環境にあるタンパク質分子、天然変性タンパク質IDP)や細胞表面などの観察を可能にするための技術開発とその実証研究を進めてきた。最終となる本年度では以下の内容を実施し、当初の目標をほぼ達成した。1)高速AFMの更なる低侵襲化を実現し、それにより更なる高速化も実現した。開発した新走査法(OTIモード:往き走査でのみ画像を取得)により低侵襲性能が向上し、従来比で約2.5倍の高速化を達成した。更に、フィードバック制御に工夫を加えた結果、従来比で約4-5倍の高速化(毎秒約50フレーム)を達成した。この新技術を用いて従来の速度でイメージングした場合、脆弱な試料系でも構造・機能を乱さずにイメージングできる。2)ガラスピペット先端を流れるイオン電流の計測に基づく走査型イオン伝導顕微鏡(SICM)に代わる拡散電位計測に基づく新規プローブ顕微鏡(SNPM)の開発に成功した。ガラスピペットの開口直径が4 nm前後にまでなると、イオン電流の減少とノイズの増加により、高解像性能と高速性能の更なる両立は難しくなってきた。そこで開口径に依存しない拡散電位の利用を検討した。その結果、4 nm前後の開口径であっても、極めてS/N比の高い拡散電位計測ができ、その結果、高解像性能と高速性能が同時に達成できた。3)装置性能の実証研究を進め、脆弱なバイオ試料系の観察に成功した。完成したばかりのSNPMについては本格的なバイオ応用には至っていないが、高解像化した高速SICMを利用して悪性度の異なるがん細胞表面の形状動態と柔らかさマップを得ることに成功した。OTIモードを広く利用し、膜タンパク質MsbA、種々のIDP、長いコイルドコイルであるEEA1、デルーフ細胞などの非侵襲高速イメージングに成功した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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