研究課題/領域番号 |
17H06123
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹谷 純一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20371289)
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研究分担者 |
小林 伸彦 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (10311341)
渡邉 峻一郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任准教授 (40716718)
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研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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キーワード | 有機半導体 / 単結晶 / メカノエレクトロニクス / 分子振動 / センサ |
研究実績の概要 |
本研究は、フレキシブルな有機半導体における巨大なメカノエレクトロニクス応答のメカニズムを解明し、超高感度歪センサや振動発電によるエネルギーハーベストなどの新機軸に道を拓くことを目的とし、初年度の研究を研究計画どおりに進めた。 フレキシブルメカノエレクトロニクス素子を構成する最重要ビルディングブロックは、超薄膜の有機半導体単結晶である。本年度は、歪導入有機半導体単結晶の構造解析、歪導入有機半導体単結晶のフォノンと電子の相互作用解析、歪による電子状態変化と誘起電荷移動の物性研究、等により、厚み方向にわずか1~2分子層で形成される超薄膜有機半導体単結晶を成膜することに成功した。このようにわずか数分子膜においても良好な電子伝導性が得られた。本研究成果はScience Advances誌に受理され、またNature Nanotechnology、Nature Electronics誌等のハイインパクトなジャーナルにもハイライト記事が記載された。また、この成果をプレス発表「厚さわずか数分子、2次元有機単結晶ナノシートの大面積成膜に成功」(2018/2/3)し大きな関心を集めた。 さらに、スピンをプローブとしたスペクトロスコピーを実施、有機半導体素子性能を支配する要因が、ナノスケールの分子振動であることを明らかにした。本研究成果は、Nature Physics誌に受理され、さらに同誌のNews and Viewsにハイライトされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フレキシブルメカノエレクトロニクスを目指した5項目のうち、①超薄膜分子層結晶の複合材料の作製プロセスの確立、③電子物性と理論研究を融合し、フォノンと伝導度のミクロな結合メカニズムの解明、⑤センサとプリンテッドLSIを組み合わせたメカノエレクトロニクスを創成の3項目において顕著な結果が得られた。 まず、フレキシブルメカノエレクトロニクス素子のコアであるわずか数分子層からなる超薄膜有機半導体単結晶の大面積塗布技術の確立に成功した。本手法は下地の基板に制限がなく、さらに4インチウエハーサイズに渡り均質な単結晶薄膜を作製できることから、センサ素子やセンサ信号の高速処理回路を実装する上で、最重要な課題が解決できたと言える。また、スピン共鳴測定や、ラマン分光測定に加え、低温電子輸送測定の実験結果と理論を包括的に組み合わせ、有機低分子特有のフォノンにおける分子振動の効果を明らかとした。この知見をもとに、有機半導体分子で達成しうる最大の移動度は、シリコンにも匹敵する>500 cm2V-1s-1にもセンサを有機半導相関になり得ることを予想した。上記の電子輸送とフォノンの相関を理解できたことで、体実装単結晶を用いた歪センサを開発することに成功した。本抑歪センサは、曲げ歪により分子振動が制される効果よって達成され、その感度は従来の金属性の10達が倍以上にもなることがわかった。初年度に計画した項目成されただけでなく、次年度の研究計画を前倒し、基盤技術の確立ができたため、研究計画は当初の予定より進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立した超薄膜有機半導体分子の電子と分子振動の相関の普遍性について、スピン共鳴やラマン分校計測技術をベースに掘り下げ、室温付近でさらに高移動度が実現する物質開拓を行う。また、歪に伴う電子状態の変化を理論・実験の両側面から系統的に調査する。 前年度に得られた高い感度をもつ歪センサを振動センサや加速度センサ等に応用するためにも、超薄膜半導体表面をアクセプタ性分子でドーピングし、抵抗素子としてのデバイス実装を目指す。
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