研究課題/領域番号 |
17H06127
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
齋藤 政彦 神戸大学, 数理・データサイエンスセンター, 教授 (80183044)
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研究分担者 |
山田 泰彦 神戸大学, 理学研究科, 教授 (00202383)
太田 泰広 神戸大学, 理学研究科, 教授 (10213745)
望月 拓郎 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (10315971)
吉岡 康太 神戸大学, 理学研究科, 教授 (40274047)
Rossman W.F 神戸大学, 理学研究科, 教授 (50284485)
野海 正俊 神戸大学, 理学研究科, 教授 (80164672)
大仁田 義裕 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (90183764)
小池 達也 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (80324599) [辞退]
三井 健太郎 神戸大学, 先端融合研究環, 助教 (70644889)
佐野 太郎 神戸大学, 先端融合研究環, 助教 (10773195)
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研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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キーワード | 可積分系 / モジュライ空間 / 見かけの特異点 / モノドロミー保存変形 / 量子コホモロジーとミラー対称性 / リーマン・ヒルベルト対応 / パンルヴェ方程式 |
研究実績の概要 |
代数曲線上の放物接続や放物Higgs束のモジュライ空間と放物接続のモノドロミー保存変形の研究を引き続き行った。S. Szaboとモジュライ空間上に、見かけの特異点とその双対の座標を導入できる事を示し、モジュライ空間が代数曲面のヒルベルト概形と双有理となる事を示し、特殊な場合にモジュライ空間の詳しい構造や幾何学的ラングランズ予想との関係の研究を行った。稲場は、モノドロミー保存変形の合流問題を代数幾何学的に捉えなおした。岩木はI型パンルヴェ方程式系の2パラメータτ関数を位相漸化式とWKB解析の方法で構成した。望月は、Dirac型特異モノポールとq差分加群の関係を明らかにし、フロベニウス多様体や量子D加群を微分幾何学的に構成した。吉岡は、エンリケス曲面上のベクトル束のモジュライ空間について新しい結果を得た。大仁田は、アインシュタインケーラーC空間のR空間のラグランジュ部分多様体について研究した。Rossmanは、曲面の微分幾何学についての離散化の理論を研究した。太田は微分型Yajima-Oikawa方程式の解が3種類の型に分類される事を示した。山田は、q-ガルニエ系について、パデ法等により研究した。また、野海と山田はRuijsenaarsと、楕円 Painleve 方程式のLax 形式と, van Diejen の BC 型楕円差分作用素との関係を明らかにした。細野は、K3曲面の族とある種の超幾何系の関係についてミラー対称性予想の観点から研究した。三井はネロンモデルの新しい相対コンパクト化を構成した。佐野は対数変形理論を使ってケーラーでないCalabi-Yau多様体で第2ベッチ数が任意に大きくなる例を構成した。京大数理研、神戸大、東大で関連する国際研究集会を開催した。研究代表者、研究分担者、協力者は上記の結果について、インド、カナダ、ロシア等の研究集会で招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代数曲線上の特異接続のモジュライ空間およびモノドロミー保存変形の幾何学については、稲場が確定特異点型から不分岐な不確定特異点への合流の理論を代数幾何学的に捉えなおした研究のプレプリントを発表した。また、齋藤とvan der Putの一般化されたストークス・モノドロミーデータの特性多様体と非アーベル的ホッジ対応による放物Higgs束の間のP=W予想に対するS.Szaboの結果等、種々の結果が得られており、新しい研究の進展が見られる。齋藤とSzaboは、特異接続およびHiggs束に対する見かけの特異点の理論により、モジュライ空間の詳細な構造を記述する方法を開発し、それを用いた放物接続、放物Higgs束のモジュライ空間の構造および放物ベクトル束のモジュライ空間の構造と自然な対応による幾何学的ラングランズ予想の研究も進んている。フーリエ・向井対応による圏同値を示す為に、核層のコホモロジーの様子を調べたが、大学院生の松原は特別なモジュライ空間ではあるが、求めるべき結果を示す事に成功した。岩木はI型パンルヴェ方程式系について、2パラメータのτ関数を位相漸化式とWKB解析の方法で構成した。望月のモノポールと差分方程式の対応の微分幾何学的な研究、フロベニウス多様体や量子D加群の理論の研究、野海・山田らによる離散パンルヴェの具体的な研究等の進展があった。また、微分幾何学におけるRossmanの曲面の離散化の研究、大仁田の調和写像の研究などにも進展があった。代数幾何学では、吉岡のエンリケス曲面上のベクトル束のモジュライ空間の研究、佐野の高次元多様体の変形理論の研究、三井のヤコビ多様体のネロンモデルの新しい構成などの結果が得られた。また、細野らによる超幾何級数とK3曲面族の関係とミラー対称性の研究の進展もあり、全般的に順調に研究は進んでいる。関連する国際研究集会を6件開催した。
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今後の研究の推進方策 |
不確定特異点をもつ接続やストークス構造の幾何学、おおびリーマン・ヒルベルト対応、モノドロミー・ストークスデータ保存変形等について、包括的に研究を進める。また、高次元双有理幾何学の観点から放物接続や放物Higgs束のモジュライ空間の詳細な構造の研究を進めるとともに、可積分系への応用を進める。また幾何学的ラングランズ対応をフーリエ・向井変換によって与えるために、放物接続のモジュライ空間の詳しい構造および放物ベクトル空間のモジュライ空間の構造、および積分変換をあたえる核層の候補についてコホモロジーの決定を行う。非アーベル的ホッジ対応の下での上記モジュライ空間の変形と一般化されたストークス・モノドロミー空間の構造を調べ、「P=W予想」や混合ホッジ構造についての予想などついて研究し、数理物理学的な考察を行う。 位相的漸化式とWKB解析の関係については、岩木の理論を幾何学的に焼き直し、問題の新たな定式化、そして量子曲線の理論等との関係を明確化する。Lisovyらのパンルヴェ方程式のτ関数の研究を様々な観点から考察し、理論の背景を探り、モノドロミー保存変形τ関数の幾何学的意味を明確化する。2019年4月29日ー5月3日に、仏Dijonで「Geometry and Integrable Sysytems」を開催する。2019年6月24日ー28日に、齋藤と望月らは京大数理研で「Moduli Spaces, Representation theroy and Quantization」を組織する。国内外の一流研究者を集め、また若手の育成を図る機会とする。高次元代数幾何学分野、数理物理学・ミラー対称性分野については、それぞれ研究分担者、研究協力者の専門分野において独自の研究を進めるとともに、上記研究を活かした新たな共同研究の可能性を探る。また、海外の研究者との意見交換や共同研究を進める。
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